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これって日本語でどう言うの?翻訳者泣かせの中国語表現


東洋デザインの建物のドアと、中国語が書かれた壁と、建物の外に置かれている木製のテーブルと椅子

国民性と言語・文化をテーマにしたブログシリーズの第一回目では、「日本語にはあって中国語にない」表現や文化的背景について解説しました。今回の記事では、その逆、つまり「日本語にはなくて、中国にはある」表現や言葉に注目してみます。同じ対象や現象を説明するのにも、日本と中国では違う言葉を使っていることが分かると、世界がぐっと広がりますよ。


親族関係を表す言葉

行き交う人々の中で、銅像の端に座り花を持つ中国人のおばあちゃん

中国語では親族関係を表す単語が日本語に比べて格段に多く、複雑です。例えば、日本語では、父方と母方の祖父母を区別せずに、「祖父・おじいちゃん」「祖母・おばあちゃん」と呼ぶことが多いと思います。


しかし、中国語では、父方の祖父は「爷爷(Yéyé)」、 父方の祖母は「奶奶(nǎinai)」といい、母方の祖父は「 老爷(Lǎoyé)」もしくは「外公(wàigōng)」、母方の祖母は「姥姥(lǎolao )」もしくは「外婆(wàipó)」と呼びます。


さらにややこしいのは、日本では「いとこ」「甥」「姪」「伯父」「叔母」でざっくり呼ぶ親族関係も、「父方か母方か」「男性か女性か」「年上か年下か」ですべて呼び名が異なるという点です。


例えば、同じ「いとこ」でも母方のいとこは、自分より年上の男性の「表哥(Biǎo gē)」、自分の年下の男性の「表弟( biǎo dì)」、自分より年上の女性の「 表姐(biǎojiě)」、自分より年下の「表妹( biǎomèi) 」というように使い分けます。これが父方の「いとこ」になると、「表」が「堂(Táng)」に置き換わります。


中国語で親族の呼称が複雑な理由


中国語の親族の呼称が日本語に比べて格段に複雑なのは、中国の家族制度が関係しています。男系の血縁関係を重視するため、父方を「内」とみなし、母方は「外」扱いされてきたのです。そのため、母方の祖父祖母には「外」が付きますし、父方のいとこににも「内」を表す「堂」という漢字が付きます。


このように自分を中心にして、父と母と関係のある人たちすべてに固有の名称を与えることで親族関係がどんどん広がっていくのが中国文化の特徴です。


私が中国の大学で教えていた当時は、政府が一人っ子政策を実施していたにもかかわらず、どの学生にも「お兄さん(哥哥)」「お姉さん(姐姐)」がいることが最初は不思議だったのですが、後でよくよく聞いてみると、学生たちは「いとこのお兄さん(堂哥、表哥)」「いとこのお姉さん( 堂姐、表姐)」について言及していたことが分かりました。


このように親族関係が広がることで、血縁関係を基盤にしたネットワークが形成され、手厚い相互扶助が可能になります。一緒に商売をしたり、困ったときにお金を借りたり貸したりなど、中国の親族関係は日本よりも格段に濃密です。


中国医学由来の言葉

竹製の敷物と巻き簾と一緒に並べられたノートと漢方薬の材料

中国人の多くは自分の体調を整えるために、程度の差こそあれ、中国医学の知識を活用します。それは民間医療レベルのものもありますし、西洋医学と調和した科学的にも認められている方法もあります。


そのため、体調不良を表すときに、中国医学由来の言葉を使うことがあります。日本人の多くが中国医学の知識を持ち合わせておらず、そのフォーマットを使って自分の体調をモニタリングすることがないため、それらの語を日本語に翻訳することは困難です。いくつか例を挙げましょう。


「上火」


そのうちの1つに「上火(Shàng huǒ)」 があります。辞書で調べると意味は「のぼせる」と述べられていますが、その一言で表せないほど、さまざまな症状について「上火」という言葉が使われます。


例えば、ほてり、発熱、めまいだけでなく、口内炎や吹き出物ができたり、便秘になったり、喉の渇きが引き起こされたり、喉が痛くなったりなどです。あまりにもさまざまな症状について「上火」が使われるため、私が中国に住み始めたばかりの頃はとまどっていました。しかし、しばらくすると、どうやら本来体が欲しているものと、口にするものや体に取り入れるものがマッチしないときに起きる現象を指していることが分かってきました。


例えば、過去の記事でも言及したように中国人は食べ物を大まかに「体を冷やすもの」と「体を温めるもの」に分類します。夏はできるだけ体を冷やすものを食べなければならないのに、そうせずに逆に「体を温めるもの」を食べると「上火」を起こしてしまうのです。


「酸痛」


中国医学由来のため、日本語には訳しづらい別の単語に「酸痛(Suāntòng)」があります。中国で生活していたときにこの言葉もたびたび耳にしましたが、日本人である私にはいまいちどんな痛みなのかピンと来なかったことを覚えています。


中国医学によると、「酸痛」とは「だるくて痛い」感覚だそうです。いわれてみると、よく運動をした後に感じる筋肉痛を中国の友人たちは「酸痛」と表現していたことを思い出します。


「中暑」

また、熱中症のことを「中暑(Zhòngshǔ)」と呼ぶのも中国医学に由来しています。ここで使われている「中」とは、「ダメージを与える」という意味で、考えてみると日本語でも「中毒」や「脳卒中」などの言葉に使われていることに気付きます。


まとめ


今日は中国語にはあって日本語にはない言葉として、親族の呼称と中国医学に関係した言葉を紹介しました。言葉を使って表そうとする対象や症状は同じでも、その表し方は中国と日本で大きく異なることがお分かりいただけたと思います。


そのため、これらの言葉を正しく翻訳するためには、単に表面的な意味だけ覚えて訳を当てるだけでは不十分です。中国の家族制度や医学に関する基礎的知識を学ぶと、その言葉を使うときにネイティブはどんなイメージを持っているかをわずかながら把握することができるようになるのです。


参考文献:

「親族語彙に見られる待遇意識ー現代日中両語の対照研究からー(陳露)」


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。



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