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食は中国にあり。多彩すぎる中国語の食表現④~身体はとにかく温めろ


私が初めて中国に旅行に行ったのは今から15年以上前のことになります。その時受けた数々の衝撃は今でも昨日のことのように覚えています。食に関する驚きもいろいろとありましたが、そのうちの一つが「常温(Chángwēn)のビール=啤酒(Píjiǔ)」でした。


日本のお店に入って常温のビールを出そうものなら、「クレーム必至」ですが、その後中国で暮らしてみて「常温のビール」が店の側の冷やし忘れでも、嫌がらせでもないことが分かりました。むしろ、ビールを注文したら「冰的!(Bīng de)=冷えたやつ」とわざわざ言わないと「常温のビール」がデフォルトで出てくることも経験しました。


今回は「中国のビールはなぜぬるいのか?」というテーマからスタートし、中国の「医食同源」にまで話を広げていきたいと思います。


中国のビールはなぜぬるいのか?


常温で出されるのはビールに限りません。中国ではレストランで出される水に氷が入っていることもほぼありません。暑い夏の日でも、それは同じことです。それはなぜでしょうか?


理由は中国人が身体を冷やすことを極端に嫌うからです。同じ理由で中国の人たちは頻繁にお湯を飲みます。学校でも、会社でも、お店でも、列車の中でも、給湯器が必ず設置されています。そして、誰もが「My 水筒」を持っていて、継ぎ足しながら、季節に関係なくお湯を飲み続けます。


中国の人たちは、普段自分たちが口にするもの、体に入れるものの温度をとても気に掛けます。私も10年にわたる中国ライフでその姿を日常的に目にしていたため、帰国したばかりの時は、クーラーがガンガンに効いたお店で氷がたっぷり入った水が出されたり、日本人がキンキンに冷えたビールを飲んだり、アイスクリームを食べたりするのを見て、違和感を感じたものです。


文字通り温度の低い食べ物や飲み物だけでなく、中国の人たちは身体を冷やす性質を持っている食べ物にも敏感です。代表的なものとして、きゅうりは体を冷やし、唐辛子は逆に体を温めると考えられています。そのため、暑い日にはクーラーや扇風機に当たりつづけて体を冷やすのではなく、きゅうりを生でかじります。かつて中国の大学で教えていたときに、学生たちはクーラーのない教室で片手にきゅうりを握って、時折それをかじりながら授業を聞いていたことを思い出します。


「上火」とは?



中国にはさまざまな事象を「陰」と「陽」に分けてとらえる思考パターンがあります。何を、どの程度食べるかに関しても、中国の人たちは常に自分の体が「陰」「陽」のどちらに傾いているかを意識します。どちらが「良い」「悪い」の問題ではなく、できるだけバランスの取れた状態を保つことが重視されます。


きゅうりを食べることに関していえば、夏は体も熱くなり、「陽」に傾いている状態です。そこで体を冷やすきゅうりを食べることで、体を冷やし「陰」へと調整します。逆に夏の暑い日に唐辛子がたっぷり含まれた料理や、身体を温めるとされるライチを食べ過ぎると、「陽」に傾き過ぎてしまいます。場合によっては、顔に吹き出物が出ますが、その状態を「上火(Shàng huǒ)」と言います。あえて日本語で言うなら「のぼせている」状態でしょうか。体が熱を帯び、炎症を起こしたり、腫れたりします。


「陽」寄りの食物を「阳性食物(Yángxìng shíwù)」といい、「陰」寄りの食物を「阴性食物(yīnxìng shíwù)」と呼びますが、以下のようにして見分けられます。


・玉ねぎ、さつまいも、里芋、根菜類など土に埋まっている野菜は阳性、白菜やほうれん草など葉物は阴性。


・水分を多く含むものは阴性。


・西瓜やトマト、なすなど夏野菜は阴性、大根など冬野菜は阳性。


・羊、鶏肉は阳性、豚、鴨肉は阴性。一般的に動きが激しい動物の肉は阳性、おとなしい動 物の肉は阴性とされる。


冬至は特別な日


中国の暦では1年を4つの季節に、さらに各季節を6つずつに、合計24に分ける「二十四節気」が用いられています。日本でも「立春」「夏至」「冬至」といった言葉を目にすることがありますが、由来は24節気です。


中でも冬至は一年の中でも昼間の時間が最も短い時間とされ、もっとも寒さが厳しい日とされます。そのため、体を温めるための食べ物が中国のどこででも好まれるのです。日本でも冬至にはゆず湯につかって身体を温めたり、かぼちゃを食べたりします。ちなみにかぼちゃを食べるのは身体を温めるのに良い食材というよりも、縁起が良いからだそうです。


さて、中国でも冬至の日には特別な料理を食べます。食べる食材は地方によってさまざまですが、体を温める羊の肉やスープ、またショウガがたっぷり入った水餃子を食べます。実際の効能を感じられるかは人それぞれでしょう。しかし、同じ日に同じものを食べることで、家族や友人との絆を強められるのも確かです。東北地方では冬至の日に餃子を食べますが、みんなで集まって餃子を作るのも大きなイベントであり、楽しみの一つでもあるのです。


まとめ:医食同源


このように健康のためには医療だけでなく、食べ物も重要であるという考え方「医食同源」が中国では一般的です。ただ、中国ではもともと「医食同源」という言葉は使われておらず、「食药同源(Shí yào tóng yuán)」がオリジナルということも覚えておくと良いでしょう。


日本でも以前は季節に合わせて旬の野菜を積極的に食べたり、特別な料理を作ったりしていました。それが今ではほとんど薄れてしまいました。中国の人たちの思考パターンである、食によって陰と陽のバランスを取る発想は参考にできるかもしれません。


参考サイト:


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。



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