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中国で爆上がり?消費者のサステナビリティ意識

更新日:4月16日



かつて「爆買い」で知られた中国ですが、近年消費者の意識が大きく変化しています。


コンサルティングファームの BCG(ボストン コンサルティング ファーム)が2022年6月に発表した報告書によると、「日常生活における自分の行動が気候変動に与える影響について、あなたは気にしていますか」という質問に対して、中国の消費者の55%は「ときどき気にしている」、39%は「いつも気にしている」と回答し、全体の94%がサステナビリティ意識を持っていることが分かります。


ちなみに日本は47%にとどまり(「ときどき気にしている」は37%、「いつも気にしている」10%)、調査対象国11か国中、最下位でした。


今回は、私たちが知らない間に大きく変容している中国の消費者のサステナビリティ意識についてレポートします。

中国消費者が求めるサステナビリティ:最新の調査結果



最近発表された「中国の消費者市場における環境・低炭素・サステナビリティトレンドに関する調査報告書 2023(中国消费市场绿色低碳可持续趋势调查报告(2023))」は、中国社会が経験した3年間のコロナ禍が消費者の健康や環境への意識を大きく変えたとしています。


コロナ前の2016年10月にも中国政府は「健康中国2030計画綱要」を打ち出しており、健康生活の普及や医療サービスの拡充、健康関連産業の育成を推し進め、2030年までに国民の平均寿命を79歳まで延ばすという目標を掲げていました。


そして、コロナ禍中も政府主導ではインターネットとスポーツを組み合わせた事業を積極的に推し進め、さまざまなスポーツアプリを急成長させました。また、「2024年最新中国トレンドワード」でも言及しましたが、都市部の若者たちを中心に「Citywalk」、つまり、都市を歩いたり、自転車で探索したりする観光形式もトレンドになり、今や「00後(リンリンホウ、2000年以降に生まれた若者たちの世代)」にとって三種の神器とは「スポーツ器具」「スポーツウェア」「健康食品」だといわれるほどです。


こうした消費者の健康志向とサステナビリティ意識は切っても切れない関係にあると言えるでしょう。つまり、地球の未来を考えた「大きな」サステナビリティ意識というよりは、自分にとっても環境にとっても良いものを選びたいという、「小さな」サステナビリティ意識がマーケットを牽引しているのです。



サステナビリティ意識が特に高いのは「都市生活者」と「若者たち」



同報告書によると、「一線都市(政治・経済で重要な地位にある大都市)」である北京、上海、広州、深圳の居住者は「二線都市」以下の都市に比べてサステナビリティ意識が高いと言われています。


ちなみに「一線都市」「二線都市」といった分類は中国の「第一財経」というメディアが発表している「都市商業魅力ランキング」に基づいており、毎年変化します。ランクが高ければ高いほど、居住者の生活水準が高く、都市の経済規模も大きいというわけです。


2023年において北京、上海、広州、深圳に居住する都市生活者の92%はサステナビリティ意識を持っていることが報告されており、これは「二線都市」「三線都市」「四線都市」を上回っています。


都市生活者のサステナビリティ意識が高いのは、日本でもたびたび取り上げられる PM2.5 などの大気汚染の問題と深い関係があります。ときには視界が 500m を切るほどになるといわれる深刻な大気汚染を経験している人たちが、環境問題を「自分ごと」と捉えており、強い関心を持っているのです。


また、前出の報告書によると、「一線都市」生活者に加え、「00後」の88%がサステナビリティ意識を持っているとのことです。これは「90後」の62%、「80後」の47%、「70後」の24%を大きく上回っています。


※「90後(ジウリンホウ)」「80後(バーリンホウ)」「70後(チーリンホウ)」はそれぞれ、1990、1980、1970年代以降に生まれた世代のこと


リユース?それともゴミ拾い?


「一線都市」の「00後」の若者たちの今のトレンドは「Stooping」だといいます。「Stooping」とは、アメリカのニューヨークで広く定着しているカルチャーで、不要になった家具を玄関先(Stoop)に置いておくと、必要な人がそれを持って行って使ってくれる「リユース」循環システムです。


以前の記事「中国人の『面子』は日本人の『空気』?!」という記事でも書いたように、伝統的な中国文化ではなによりも面子が大切にされるため、「新品」が好まれ、もともと人が使ったリユース品を自分の家に置いたり、古着を売ったり買ったりする習慣はありませんでした。しかし、近年サステナビリティ意識の高い若者たちによって「Stooping」が浸透しているのは驚きです。


現在、「Stooping 北京」は、中国版インスタ「RED(小紅書)」に13万人以上が登録し、SNSを経由して、不要になったものをやりとりしているとのことです。そして、「Stooping」グループは北京だけでなく、中国12以上の都市で結成され、行き交う投稿数は数百万の閲覧数を集めています。



若年層の消費意欲の低下と連動?



ただ、こうした若年層のサステナビリティ意識、リユース志向は消費意欲の低下とも連動しているように思われます。かつて中国の「爆買い」の象徴のように見なされていた11月11日の「独身の日」は毎年の恒例行事として大がかりな前夜祭を実施して中国の消費を盛り上げてきましたが、2020年代に入って一変しました。「低炭素」「サステナブルライフ」がキーワードになり、徐々に売上は伸び悩んでいるようです。


大和総研の分析によると、その背景にはコロナ禍以降の若年層の失業率の上昇が関係しているとのことです。16~24歳の失業率は2023年6月には21.3%を記録し、大学を卒業しても就職できない若者たちが5人に1人もいることになります。こうした若者たちに、かつて「月光族(毎月の給料を使いつくすことを指す)」と呼ばれた世代の消費行動を求めること自体が非現実的だと言わざるを得ません。



まとめ

中国の都市生活者、特に若者たちのサステナビリティ意識の向上の背景には、環境汚染や失業率の上昇があり、環境に配慮した消費を選ばざるを得ない状況に追い込まれている姿も見え隠れします。


このシリーズでは、今後も持続可能な社会にかじ取りを始めている中国社会の現状をお伝えいたします。



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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。



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