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“中国らしさ”って何?翻訳・ローカライズでニュアンスを伝えるコツ

アジアの地図上に、中国風建築のシルエットが重ねられたアート風のイラスト。

「〇〇らしさ」って何でしょう?日常生活でふと使うことがあるかと思いますが、言葉で表現しようとすると意外と難しいことに気づきます。そこで、今回は弊社ブログでおなじみの中国にフォーカスし、「中国らしさ」とは何かを探ってみたいと思います。


たとえば「赤」は、情熱や危険を連想させがちな日本や欧米とは異なり、中国では“幸福”や“繁栄”を象徴するおめでたい色とされています。こうした文化的な違いは、単純な翻訳では伝わらない「ニュアンスのズレ」を生み、コンテンツの訴求力やブランドイメージに大きく影響を与えます。


特に中国市場向けの翻訳・ローカライズでは、この“らしさ”の表現が成功を左右することも少なくありません。


本記事では、翻訳やローカライズの現場で気をつけたい「中国らしさ」の表現について、文化背景と実例を交えながら解説します。



そもそも「中国らしさ」って何?

 蓮の花や菊の花、中国語の書が描かれた複数のカードや紙片のコラージュ。

まずは「中国らしさ」とは何か、具体例を挙げて深掘りしてみましょう。


「色」に込められた意味~赤と金はなぜ好まれる?


中国文化では、「色」がもつ象徴性が非常に強く、人々の感情や価値観に深く根付いています。特に「赤」と「金」は祝福と富を象徴する色として、旧正月、結婚式、店舗の開店など、「おめでたい場面」で頻繁に用いられます。


中国では「紅包(hóngbāo)」という、赤い封筒にお金を入れて贈る習慣があります。これは「赤=運気を上げる色」と考えられているためです。一方で「白」は死や弔事を連想させる色とされ、祝い事に使うのは不適切とされています。


そのため、商品パッケージや Web サイトのカラーデザインをローカライズする際にも、単に「目立つ色」を選ぶのではなく、文化的な意味を理解した上で色を選ぶことが大切です。


縁起を大切にする文化〜数字やモチーフの意味


中国では「縁起」が生活の隅々にまで深く影響しています。特に数字には強い意味が込められており、「8(発)」は「发财(fācái)=お金が入る」を連想させる縁起の良い数字とされています。一方で「4(死)」は「不吉」とされ、ホテルやマンションの部屋番号で避けられることもしばしばです。この点は日本の「4」や「9」と似ていますね。


また、動植物のモチーフにも象徴的な意味があります。たとえば「蓮の花」は「清らかさ」や「連綿と続く繁栄」を表し、「蝙蝠(こうもり)」は「福」と発音が似ていることから幸運の象徴とされます。翻訳やデザインにこうした縁起モチーフを無意識に使ってしまうと、思わぬ誤解や抵抗を招く恐れがあるため、注意が必要です。


地域ごとの文化差〜一口に中国といってもこんなに違う!


「中国らしさ」は決して一枚岩ではありません。中国は56の民族から成る多民族国家であり、地域によって言語、食文化、価値観、ビジネスマナーなどが大きく異なります。


たとえば、上海をはじめとする沿海都市では欧米文化や流行に敏感で、比較的モダンで洗練された感覚を好みます。一方、内陸部や地方都市では伝統や儀礼を重んじる傾向が強く、保守的とも評されます。


同じ「中国向けコンテンツ」であっても、どの地域や層をターゲットにするかによって、最適な表現は大きく異なるのです。


伝統と現代が共存する価値観


近代的な都市開発やデジタル化が進む一方で、中国では儒教的な価値観や伝統行事が今なお日常に息づいています。たとえば、旧暦を重んじる文化や「孝順(親孝行)」という考え方、風水に基づく習慣などは、今でも多くの人々の判断基準に影響を与えています。


どれだけ現代的な言葉を使っても、その背景にある「伝統的価値」を無視してしまうと、「中国らしさ」を表現しきれず、ターゲットからの共感を得にくくなります。



中国らしさを翻訳で表すときの落とし穴

驚いたような表情の男女の頭上に、色違いのクエスチョンマークが描かれた吹き出し。

意味は合ってても「雰囲気」がズレる問題


たとえば、日本語で「さっぱりしている」といえば、性格が潔く爽やか、または味が薄めで好感が持てるというニュアンスがあります。しかし、中国語で直訳して「清淡(qīngdàn)」などとすると、「物足りない」「薄味すぎる」とネガティブに受け取られることがあります。

単語の意味だけでなく、文化的な受け止め方や感情のニュアンスまで理解しておくことが不可欠です。


日本語と中国語の「語順」と「強調ポイント」の違い


日本語は主語を省略しやすく、結論を後に回す傾向があります。一方、中国語では主語を明確にし、要点を先に伝える構造が一般的です。そのため、原文をそのまま訳すと「もったいぶった印象」や「結論がわかりづらい」と感じられてしまうこともあります。


また、日本語では「〜でもあります」「〜といえるでしょう」といった婉曲表現が好まれますが、中国語では明確かつストレートな言い回しのほうが、信頼感を得やすい場面も多くあります。


宗教・風習・歴史に関わるセンシティブな表現


中国では、政治や宗教、歴史的な背景に触れる表現には厳格なガイドラインがあります。特にチベット、新疆、台湾などに関わる言及は、極めて慎重を要します。内容によっては配信停止や炎上リスクにつながる可能性もあります。


また、伝統的な信仰や儀礼を誤解したり軽視したりすると、ブランドイメージに傷がつくおそれもあります。翻訳者は単語の選択だけでなく、その背景にある価値観や世界観にも十分に配慮することが求められます。



ローカライズで成功するためのポイント

精巧な彫刻が施された中国風の羅針盤のクローズアップ。

ターゲット層を明確にすることが最優先


「誰に届けたいのか」を明確にすることは、どのマーケティング施策でも共通して重要なポイントです。特に中国市場ではこの意識がより一層大切になります。北京・上海・広州などの「一線都市」と地方都市では、同じ年齢層でも好まれる表現や商品価値が異なってきます。そのため、ターゲット層を細分化し、深く理解することが成功の鍵と言えるでしょう。


表現と言葉遣い、色や数字も“文化に合った選択”を


たとえば、健康食品の広告で「無添加・自然志向」を打ち出す場合、日本では“優しさ”や“安心感”を重視しますが、中国では「科学的根拠」「高級感」「即効性」の方が訴求力を持つことも少なくありません。


色や数字の選択も含めて、文化の好みに合わせた言葉選びが必要です。


翻訳だけじゃなく「トータル設計」を意識する


真に“刺さる”ローカライズとは、言葉だけでなく、ビジュアルや UI、レイアウトまで含めた「全体の設計」によって生まれます。たとえば、赤と金を効果的に取り入れた Web デザインや、縁起の良い数字や言葉を意識したナビゲーションなど、細部まで“らしさ”を感じられる設計が、現地ユーザーの心をつかみます。



実例で見る「中国らしさ」の翻訳・ローカライズ

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広告コピーの“ひと言”が成功を左右する


たとえば、化粧品ブランドが日本語の広告コピー「肌に、やさしさを。」を中国語に翻訳するとしましょう(※広告コピーは架空です)。直訳すると「给肌肤以温柔。」となり、意味は通じますがややインパクトに欠けます。


中国の美容市場では「温和=肌にやさしい」よりも、「呵护(守る)」や「焕发(輝かせる)」など、ポジティブで前向きな変化を強調した表現が好まれますし、国民性に準じてなのか即効性(すぐに効果が出るか)も重要な評価ポイントです。また、「〜にやさしい」より「美しくなる」という成果を重視する傾向があります。その上でローカライズ翻訳すると、例えば「温和呵护,焕发光彩。(穏やかに守り、輝きを取り戻す)」と翻訳すると、「中国らしさ」を感じてもらいやすくなります。


祝祭・イベント関連の表現は文化理解がカギ


たとえば、旧正月にあたる「春節」は、中国最大の祝日であり、企業もこの時期に特別キャンペーンやギフト戦略を展開します。ここで使うべき表現やビジュアルには、干支や「紅包(お年玉)」、「福(ふく)」の文字の逆さ貼りなど、文化的シンボルを正しく理解することが求められます。


日本のお正月感覚のままでコンテンツを用意してしまうと、文化的な“ズレ”が生じる可能性があります。だからこそ、現地の慣習に基づいた構成が重要です。


まとめ

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中国市場における翻訳・ローカライズの成否は、「文化的背景をどれだけ正確に捉えられているか」に大きく左右されます。直訳では伝わらない価値観や習慣、言葉のニュアンスを深く理解し、ターゲットに“自然に届く表現”へと最適化することが重要です。


見た目や言い回しのひとつひとつに配慮しながら、文化に寄り添った翻訳を行うことで、翻訳者としての信頼とスキルの幅を広げることができます。一つひとつの言葉に意識を向けることが、中国市場での信頼と成果につながるのです。




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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。




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