実は深い翻訳業界⑨~「返信が早い」ってどれだけ重要?



実は深い翻訳業界④~選ばれる翻訳者ってどんな人?」の中で、弊社が考える「お仕事をしやすい翻訳者さん」の特徴に「返信が早い」という点を挙げさせていただきました。


シリーズ9回目となる今回は、この点にフォーカスします。翻訳業界で「返信が早い」ことがなぜ非常に重要なのか、業界の動向や翻訳者が心がけたいポイントについて弊社なりに解説してみます。


「返信が早い」のはなぜ大切?


一般的にも仕事が「デキる」人の条件として「返信が早い」ことがよく指摘されます。様々な理由が挙げられますが、「返信が早い」人は同僚や上司、クライアントに安心感を与えることができ、信頼されやすいと言われます。また、一見些細に見えるメールの返信作業をスピーディーに行うことで、他の重要な案件についてもきちんと納期を守ってくれるはず、という推定が働くのではないでしょうか?


それに加えて、「返信が早い」翻訳者が選ばれるのは翻訳業界の動向とも関係しています。


スピード重視の翻訳業界


翻訳業界はメディア・広告業と同じくスピードが重視される業界です。特にエンドクライアントがグローバル企業の場合、本社の決定(プレスリリースやコンテンツ制作)などが延びてスケジュールが遅れ、多言語版に翻訳する時間が十分に取れない場合も多々あります。特に近年では多くのグローバル企業がオンラインマーケティングに力を入れているため、情報が新鮮なうちに翻訳して SNS などで公開したいという場合もあり、そうなるとさらにスピードが求められることになります。


翻訳発注の仕組み


フリーランスとしてグローバル企業などのエンドユーザーと直接契約してお仕事をされている方もいらっしゃるかと思いますが、今回は多数派を占めると思われる発注モデルを例にしてご説明します。おそらく、多くの翻訳者、ライターさんは弊社のような翻訳会社やエージェントを通じて案件を受注しています。


大手エージェントはエンドユーザーから無理難題を突き付けられることが多いため(例えば、急ぎの場合で200ワード程度の小規模なものなら当日仕上げ、5,000ワードなら3日など)、それをさらに小分けにしていくつかのエージェントに振り分け、各エージェントは各翻訳者に発注します。そうなると必然的に納期が一番きつくなるのは最初の工程を担当する翻訳者というわけです。

翻訳のプロセス


さらに以前の記事で説明した通り、エンドユーザーから翻訳を受注した場合、エージェントである翻訳会社が行うのは翻訳そのものだけではありません。一般的に、以下のようなプロセスを辿ります。

この工程通りに作業が進行するかはクライアントの希望や納期、リソースの状況に応じて異なりますが、少なくとも翻訳+レビューは必須になります。クライアントはこうした幾重にも連なる工程を意識せずに「翻訳だけ」で日程を設定するため、翻訳会社は適宜、日程調整を行っています。


翻訳会社は「返信が早い」人からアサインする


以上から分かるように、すべての工程は翻訳者へのアサインから始まります。アサインするためには翻訳者にメールを送り、返信をもらわなければなりません。


弊社ではスキルが最もマッチする人から一人ひとり個別に連絡していますが、エージェントによっては一斉メールやプラットフォーム上で「早い者勝ち」という方法も採用しているようです。

いずれにしても、メール送信後、待てど暮らせど返信がなければ、その方がいくら有望でも有能でも、ハラハラして別の方にお願いすることになりかねません。


求められる「ファーストレスポンス」の基準


こうした業界事情を踏まえると、翻訳者としてはとにかく「返信が早い」方が有利ということになりますが、いったいどのくらいのスピードが求められるのでしょうか?早ければ早いに越したことはありませんが、外出時や他の用事をしているときなどもあり、四六時中メールチェックしているわけにもいかないでしょう。


あくまでも弊社の場合ですが、数十分から2時間以内くらいに返信をいただければ作業をスムーズに進められると感じています。もし、取り込み中などですぐにスケジュールチェックができなくても「今、外出中なので後で確認します」など簡単な返信をもらえるだけでも連絡がついたことで安心できます(時差がある場合は例外です)。


連絡の手段は?


翻訳業界では国も勤務時間帯も異なる中で仕事を進めることが多いため、基本的にはメールでの連絡が主流です。クライアントによっては Skype や Slack などチャットアプリを使ってやり取りしているところもあります。日本国内では急きょの依頼を電話で行うことがないわけではありませんが、かなり少なめのようです。


どの連絡手段を使うにしても、翻訳者としては翻訳会社から受注できるか確認のメールがあった場合に通知できるように設定し、すぐに返信できるようなルール作りが必要になるでしょう。

(ちなみに弊社代表はメール派。理由は内容を確認して「未読」にし、To-Do に追加できるからだそうです。)


「返信が早い」=仕事がデキる?


翻訳業界だけでなく、どんなビジネスでもコミュニケーションが高速化しているため「返信が早い」ことはますます大切になってくるはずです。


もっとも返信が早ければ「有能」で「信頼してもらえる」かといえば必ずしもそうではないでしょう。しかし、確かなのは信頼関係の基盤を築くためにはまず相手の立場や状況を配慮できることが欠かせません。そして、ファーストレスポンスが相手にとってその判断材料になることは確かなのです。


※こちらの記事は翻訳者の方に「返信を早くするよう」注意喚起するものではありません。あくまでも理想の働き方を模索するためのもので、弊社メンバー一同、それを追求している途上です…。


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。



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