実は深い翻訳業界⑦~翻訳者の一日に密着



一人で仕事をすることが多いフリーランスにとって、誰かの「仕事術」や「仕事部屋」、「一日のスケジュール」はとても気になるものです。「とても真似できないけど、憧れる!」というのもあれば、自分との共通点や参考になる点を見つけてうれしくなることも。


今回は弊社でセミフルタイムの仕事をお願いしている3人のライター・翻訳者さん(+経営者)の一日に密着し、その仕事術やタイムマネジメントの方法をご紹介します。


子育てや本業にフォーカスしながら、高いクオリティの仕事を続けるためにどんなことを工夫しているのか、皆さんにとっても「気づき」がきっとあるはずです。


1.リチャードさんの場合


日英翻訳・英語校正・ライティング担当のリチャードさんは世界各地で24年に渡り英語教育に携わった言語学のスペシャリスト。大学で教鞭をとっており、翻訳業務は仕事全体の約2割です。

大学での講義によって仕事の流れは変わるそうですが、まず彼の一日の流れをざっくりご紹介しましょう。



講義や学生の評価など、大学でのフルタイムの仕事だけでもやることは山ほどあるはずですが、それに加えてフリーランスの仕事もこなし続ける秘訣はどこにあるのでしょうか?


本人曰く、最も大切なのは「タイムマネジメント」と「効率」を意識することだそうです。


限られた時間を有効に活用するためにリチャードさんが活用している方法をいくつかご紹介しましょう。


・To-Doリスト

シンプルですが、やはり有効なマネジメント術です。日々やるべきタスクをきちんと管理することで優先順位を見定め、生活全体をうまく回すことができるようになります。彼の場合、リストの中にはエクササイズを入れることも忘れません。


・ポモドーロテクニック

弊社ブログでも紹介したことがありますが、リチャードさんも集中力を最大化するために仕事を25分ずつのセットに分け、短い休憩をとって作業時間を管理しています。


・場所を変えて仕事する

時代を超えた思考術に関するベストセラー「思考の整理学」(外山滋比古著)では、考えが浮かびやすい場所は「三上」だとあります。「三上」とは「トイレの中」「布団の中」「移動中」のことのようですが、オフィスを飛び出し場所を変えることで仕事がはかどることはよくあります。


リチャードさんのスケジュールを見てもジャズバーにPCを持ち込んでいるのが分かりますし、他にも資料をダウンロードして交通機関の中などネット環境がない場所でも仕事しています。

また彼は「トレッドミルデスク」を自ら所有し、歩きながら仕事する時間を作っているとのこと。実際、トレッドミルデスクを使うことで仕事の生産性は平均で10%向上するとのデータもあります。


こうしたマネジメント術によって、大学での講義とフリーランスという二足のわらじを履きながらも、2匹の猫と遊ぶ時間も確保できる余裕のある日々を過ごしています。


2.あきこさん(仮名)の場合


英日翻訳担当のあきこさんはリチャードさんとは違い、フルタイムの翻訳者。また、小学生のお子さんがいるお母さんでもあります。まずはあきこさんの一日を見てみましょう。



あきこさんの一日の流れから分かることはお子さんの動きを中心にスケジュールが組まれているということ。お子さんが起きる前にメールチェックなど仕事の準備を済ませ、学校に行っている間の9時から15時がコアタイム、夜も仕事再開はお子さんが寝てから、仕事時間は量が多いときは一日6~9時間前後、余裕があるときは3時間のようです。


あきこさんのスケジュールは子育てと翻訳の仕事を両立している方々に一つの気づきを与えてくれます。それは(繁忙期を除いて)基本的に「一度に一つのことしかしない」ということです。


子供が家にいる時間は子供のために全力で時間を使う、それ以外の時間は最高レベルの集中力で仕事をこなすことで生活にメリハリが生まれます。また、仕事に集中できないイライラや、子供が目の前にいるのに時間を使ってあげられない罪悪感からも解放されます。


彼女の働き方は、マインドフルネスの普及に尽力したことで知られている禅僧ティク・ナット・ハンの言葉を思い出させてくれるような気がします。


「生は今この瞬間にある。今この瞬間をないがしろにする人は、日々を十分に生きることができない」


3.まなさん(仮名)の場合


英日翻訳者のまなさんは企業資料や記事の翻訳を中心とした案件を担当。あきこさんと同じく1児の母で、お子さんは保育園に通われています。彼女の一日のスケジュールを見てみましょう。



やはりお子さん中心のスケジュールが組まれています。ディズニーのBGMも活用しているのは育児中のフリーランスさんならではです。


まなさんはスキルアップのため、以前活用していた英字新聞や海外ドラマ、ニュースではなく、お子さんと一緒に楽しめる民謡やディズニーの子どもの歌、地元の図書館で借りる英語の絵本、アニメや映画などを楽しんでおられるとのこと。


まなさん曰く「子ども向け作品に出てくる言葉はシンプルとクリエイティブ翻訳の融合。新しい表現や巧みな韻踏みに触れられ、どのようなバランス感覚で翻訳するかも学べる」そうです。また、育児に関する悩みを英語などで検索することで視野が広がり、翻訳の仕事に使える語彙や表現のストックにもつなげておられます。


子育てで慌ただしい毎日を送りながらも、日常を楽しんでおられる様子をうかがうことができますが、そんな彼女がタイムマネジメントで心がけている点は2つ。「早めにやること」と「段取り」です。

どちらも育児をしながら翻訳と格闘しておられる方ならうなずけるポイントでしょう。子どもは大人の思ったように動いてくれるわけではありませんし、いつ体調を崩すかもわかりません。また、子どもがいない限られた時間帯に効率よく仕事をこなしていくためには見通しを立てながら優先順位を定め、段取りすることが大切です。


そんなお母さんの仕事ぶりをいつもそばで見ているお子さんはアレクサに向かって「Can you play kids music?」などと英語で話しかけているそうです。

まさに仕事が育児生活を充実させ、育児がスキルアップも兼ねている、仕事・スキルアップ、育児が融合し、三位一体となった充実した生活を送っておられることが分かります。


4.弊社代表の場合


最後に弊社代表の一日をご紹介します。彼女自身、日中英翻訳家ですが、いまでは経営者という立場上、プロジェクト管理、顧客対応などにほとんどの時間を割いています。そして、なんと保育園に通う2児の母です。多忙な仕事と育児をどのように両立しているのでしょうか?



このスケジュールを見て分かるのは、完全に朝型であるということ(調子の良い時は朝4時起床)。世界中の多くの経営者が朝型の効能を述べていますが、弊社代表も昼間は顧客対応やミーティングに忙殺されるため、集中するためにお子さんが起きてくるまでの3時間を取り分けています。

ただ、欧米企業とのやり取りで対応が深夜までかかる場合もあるため、1週間の中で超朝型の日と超夜型の日という2パターンが存在するようです。


数々のグローバル企業でエグゼクティブ・アシスタントとして活躍した経験をもつ能町光香氏は仕事が速い人とは「自分の予定・自分の時間を中心に考えるのではなく、『相手の時間』をリスペクトし、それを基準に動く姿勢」を持っているといいます。


弊社代表もご主人と2人の子どもも含めて、クライアントやチームメンバーの時間軸に合わせてスケジュールを組んでいます。それが限られた時間の中で経営者として多くのタスクをこなす秘訣といえるのかもしれません。


まとめ


さて、最後にひとつ質問です。目の前にあるいくつかの石と砂をバケツに全部入れなければなりません。皆さんでしたら、どちらを先に入れますか?


先に砂を入れて石を入れるようとすると全部は入らなくなってしまいますが、先に石を入れてから砂をいれると全部入れることができます。


同じように限られた24時間をマネジメントするには大切なことにフォーカスしなければなりません。あれもこれもやろうとすると、どれも中途半端になってしまいます。


我々はまだ道半ばですが、生活の中で大切なことを優先することで、仕事もプライベートも充実させようと奮闘中です。そして、それらが結果的に翻訳のクオリティ向上につながる手ごたえを確かに感じています。


今回ご紹介したのはあくまで一例ですが、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。


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