実は深い翻訳業界④~選ばれる翻訳者ってどんな人?

更新日:9月28日

どんな分野でも活躍するためには「選ばれる」ことが必要です。


例えば、サッカーの試合でピッチに立てるのは11人、野球でポジションにつけるのは9人、オーケストラのメンバーも人数が決まっています。ビジネスの世界でも重要なプロジェクトチームのメンバーに選ばれる人とそうでない人がいます。


さて、注目したいのはいわゆる「能力が高い人」が必ずしも「選ばれる」わけではないということ。特にチームとして働く場合には単にその分野での能力に秀でているだけでなく、ほかにも多くのことが求められます。


これはフリーランスの翻訳者*1にとっても同じことです。「フリーランス」だからといって本当に「フリー」に振舞っていると、気が付くと誰にも選ばれない存在になってしまいます。もちろん、これは選ばれるために駆け引き、馴れ合いやプライベートまで浸食されるような付き合いが必要ということではありません。むしろ、そういうものに嫌気がさして組織を飛び出し、フリーランスでやっている方もおられるはずです。


「選ばれる」フリーランスとは?


ただ、「フリーランス」として他の人、例えばクライアントや他のチームメンバーから束縛されない事ばかりに重きをおくと、相手にとって一緒に働きにくい人になってしまいます。そこで自分の仕事の内容や幅、可能性を自分が考える枠にはめ込まない「フリーランス」を目指してみてはいかがでしょうか?


例えば、自分がクラブチームの監督だとしましょう。監督として今日の試合の相手チームを分析し、戦略を練っています。当然その戦略に合うイレブンを選びたいと思うはずです。もし、監督の構想など意に介さずに自分のストライカーとしての持ち味を出すことばかりを考えている選手がいれば、選ぶことを躊躇してしまうのではないでしょうか?


それはスポーツに限らず、オーケストラの指揮者も、映画監督も、そして翻訳会社も同じです。翻訳会社の先にはエンドクライアントの意向がありますし、会社としての戦略や構想があります。翻訳会社としてはそれらに適う人を選びたいと思うのは当然であり、自分の専門分野だけをリクエストしてきたり、単価を上げることばかりを求めてきたりする翻訳者とは継続的に仕事するのが難しいと感じるのもやむを得ません。



このように述べると「じゃあ、フリーランスは結局、翻訳会社やクライアントの言いなりで買い叩かれればいいのか?!」と鼻息を荒くされる方もいらっしゃるかもしれません。


以下に弊社が考える「選ばれる翻訳者」の特徴をみていただければお気づきになるかと思いますが、決してそういう訳ではありません。


自分の限界を広げることに加えて大切なのは、自分の意向や考えを丁寧に敬意を込めて発信できるコミュニケーション能力といえるかもしれません。


弊社が考えるお仕事をしやすい翻訳者さんの特徴


1.返信が速い


翻訳会社やエージェントの先にはエンドクライアントがいるため、返信が速い方は助かりますし、結果的に仕事もお願いしやすくなります。


2.返答が具体的


依頼した内容が難しい場合でも、可能な限り具体的な返答を返してもらえると依頼する側は安心します。


「自分の専門外だから無理」「他社案件が入っているから間に合わない」という場合もあるとは思いますが、「自分の能力ではここまでなら可能」「指定の納期には厳しいが、〇〇までなら何とかなります」といった妥協点を見出そうと姿勢は嬉しいものです。


3.休日について事前連絡がある


休みの日は事前に通知してくれる、もしくはバケーションメールを設定してくれているとこちらの進行管理を配慮してくれていることが分かり、チームとして働きやすさを感じます。


4.質問力がある


依頼内容について不明点がある場合は積極的に質問してくれる方とは結果として仕事がスムーズに進みます。

能力が高いとプライドもあるため、質問することを躊躇する方もおられるかもしれません。また、翻訳会社の忙しさを配慮し過ぎて手を煩わせたくないと思われる方もいらっしゃるようです。ただ、質問せずにクライアントの意図を抜きにしてお仕事をされると結局やり直しになることもあるため、積極的に聞いていただけるとありがたいです。


5.クオリティが高い


長期的にお仕事をしていくにあたっては、やはり品質が重要になります。

ただ、クオリティだけを追求することは現実的には難しく、納期が厳しい場合はすぐに応じられる翻訳者さんが優先になる場合もあります。


弊社としてはもちろんクオリティを最重視していますが、各案件の内容や納期に応じてその時点で最適な翻訳者さんに依頼を出すようにしています。


6.きちんと断る


いい人材はいつの時代も不足しているものですので微妙なポイントではありますが、できない仕事はきちんと事前に断るのが鉄則です。


フリーランスとして自分の可能性や限界を広げることと「無謀」は異なります。スケジュールのマネジメントや自分の経験や能力を度外視した受注は双方にとって学びではなく、痛みをもたらします。


7.メールから人柄が伝わる


翻訳業界では、日常的なコミュニケーションはほぼメールかチャットになります。そのため、文字のみのコミュニケーションで人柄が伝わってくる方だととても安心です。


選ばれるためにはコミュニケーション能力が重要と上述しましたが、「何を伝えるか」だけでなく「どう伝えるか」にも配慮してくださる方からはメールやメッセージからでも人柄が伝わってきます。お互い忙しいですから、長々とした文章は必要ありません。短くても丁寧さ、敬意が伝わってくると、それが翻訳の仕方にも反映されているんだろうなと感じ、安心します。


8.自分なりの考えを確立している


すべての案件がパーフェクトな形で依頼されるとは限りません。クライアントも翻訳会社も手探りでプロジェクトを進めていることも多いため、翻訳者さんにとってはやりにくい案件もあると思います。


そんな場合に、「今後はこうしてもらえればさらに速く納品できる」や、「こうすればもっと効率的」といった形でクライアントが気づかなかったところにアドバイスをくれる翻訳者さんもいます。

上記の理由に加えて、翻訳会社もいくつもの案件を抱えていて気づかないこと、見落としていることもあるたえ、それを遠慮せずにアドバイスしてくださると助かります。



以上、弊社が一緒にお仕事をしたい翻訳者の条件を挙げさせていただきました。ただ、この条件すべてに当てはまるとなると非常に厳しいですし、あくまでも理想論です。依頼する側はそれぞれの方の条件やスキル、性格をみながら最適な案件を選んでいますので、あくまでも1つの参考にしていただければと思います。


皆様が翻訳会社との良好な信頼関係を築いて、選ばれ続ける翻訳者として活躍していけますように!



注釈:

*1:翻訳者・翻訳家として活躍されている方は、フリーランスだけでなく起業されていたり、起業のグローバル部門に所属されていたりとさまざまな形態でお仕事をされていると思います。また、直接やり取りをする相手も翻訳会社やエージェント、クライアントと直接など場合によって異なることでしょう。


今回の記事では翻訳会社として翻訳者さんにお仕事をお願いするという立場から、「翻訳会社から発注を行う場合」に限定して弊社なりの事例を挙げています。あくまでひとつの意見であり、決して翻訳業界を代表するものではありませんのであしからずご了承ください。


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。

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