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執筆者の写真SIJIHIVE Team

実は深い翻訳業界⑤~選びたいクライアントってどんな会社?

更新日:2021年11月29日

「実は深い翻訳業界」第4回では弊社が考える「選びたい翻訳者」について取り上げました。翻訳者が選手だとすればクライアントは監督、ピッチに立って活躍したくても監督から選ばれなければ始まらない、そんな例えを使いましたが、では逆の立場から見たときに「一緒に仕事をしたいクライアント」の定義とはどのようなものなのでしょう?



「選びたい」クライアントとは?


今回は「選びたいクライアント」について野球のピッチャーとキャッチャーの関係を例にしてご説明したいと思います。


野球を少しでもご覧になる方はお分かりになると思いますが、キャッチャーは「女房役」と呼ばれることがあります(ピッチャーを「旦那」と呼ぶことはありませんが…)。つまり、ピッチャーとキャッチャーは夫婦関係に例えられるほどお互いのことを理解していなればならない、密接な関係ということです。


野球の場合、キャッチャーはピッチャーがどんなボールを得意としているのか、球速はどのくらいなのかなどを理解しておく必要があります。その上で試合においてはピッチャーのよさを引き出し、気持ちよく投げてもらえるよう指でサインを出しながら、コミュニケーションをとります。



さて、翻訳者にとってのクライアントはキャッチャーに似ているところがあります。ピッチャーとキャッチャーには「打者を攻略して試合に勝つ」という共通の目的があるように、翻訳者とクライアントも「案件を仕上げてエンドクライアントへ納品する」ために協働します。ただ、翻訳者としては気持ちよく仕事ができるように以下に挙げるようなポイントをクライアントに抑えてほしいと願うはずです。


一緒に仕事したいと思えるクライアントの特徴


1.コミュニケーションが丁寧


キャッチャーがピッチャー一人ひとりの個性を理解せずに、相手が誰であろうと同じサインを出すことはありません。変化球を得意とするピッチャーと、速いボールを投げられるピッチャーではキャッチャーの側のリードも変わってきます。


同じようにクライアントも翻訳者一人一人を理解しておきたいものです。翻訳会社が案件を依頼する際、大勢の人に宛てた一斉送信メールが届くのか、自分宛の個別メールが丁寧に送られてくるのとでは翻訳者側のモチベーションも異なってきます。クライアントが自分のスキルや持ち味、性格を理解してくれて上で任せてくれる仕事は丁寧に取り組もう(もちろん、一斉メールで依頼された仕事をいい加減にする訳ではありませんが…)と願うのではないでしょうか?


※一斉送信メールは、たとえば「IT に強い英日翻訳者」などざっくりとしたグループに翻訳依頼が BCC で送信されてくるといった場合を指します。このような場合はたいてい、早い者勝ちで案件がアサインされます。対して、エンドクライアントから翻訳者の指名があった場合や、翻訳会社側が品質を信頼している翻訳者に任せたい案件がある場合には個別に依頼が届きます。


また、翻訳会社側が複数の人に個別連絡をしている場合もありますが、そのようなときは「至急案件のため別の方にも同時に連絡をしておりますがご了承ください」などと一筆断りを入れてもらえると尚丁寧に感じます。翻訳者側もメールを2~3時間見れないことだってあるでしょうし、その間に別の人が返信して決まってしまうというケースも少なくないからです。


2.できる限り事前に連絡をくれる


ピッチャーが試合本番でどのように投げるか、そのプランを前もってキャッチャーと打合せしておくことが大切なように、翻訳者もできるだけ前もってクライアントから連絡をもらいたいと思っています。もちろん、翻訳業界の特性上…厳しい納期設定になることも不可避ですが、次の案件のために「この日を空けておいてほしい」と事前にお願いされていれば、急な案件にもできるだけ対応したいという心づもりができます。


第4回の記事でも書きましたが、スピード命になりがちな翻訳業界では他の条件よりも翻訳者さんの空き状況を優先せざるを得ない場合があるからです。




3.指示が明快


どんな仕事でも共通することですが、相手が分かるように伝えるには想像力が求められます。エンドクライアントや翻訳会社側の都合はもちろんありますが、翻訳者にとって分かりやすい伝え方はそれとは異なります。依頼メールを出す際に相手にとって明快なメッセージを届けてくれるクライアントだと、今後も良い関係を築いていける可能性が高いといえるでしょう。


4.追加作業が発生した場合は金額を考慮してくれる


これは Scope Creep(スコープクリープ)とも呼ばれるありがちなパターン。元の依頼内容に含まれていないことを追加でやってくれという場合です。翻訳者が声を上げるまえにきちんと具体的な条件を提示してくれると、予定していなかった作業も気持ちよく行えますよね。


5.質問への返答が明確


ピッチャーがキャッチャーに求める重要な要素の1つに安心感があります。どんなボールを投げても後ろにそらさないでがっちりキャッチしてくれると信頼しているからこそ、ピッチャーはチャレンジングな投球を思い切って行うことができます。


同様に翻訳者もクライアントに安心感を求めます。それはこちらの質問にきちんと返信してくれる、またこちらが求めている回答をきちんと返してくれるということです。こうした信頼関係が仕事のクオリティを向上させます。


以上、弊社が考える「選びたいクライアント」の条件について5つ挙げさせていただきました。こうやってみてくると、「選びたい翻訳者」の条件に限りなく近づいてくることにも気づきます。


つまるところ、仕事を依頼する側もされる側も、お互いの立場や仕事に対する敬意と充実したコミュニケーションが不可欠だということになりそうです。クライアント側であっても、翻訳者側であっても、相手を大事にすることで自分をも大事にできることを忘れないようにし、気持ちよく仕事をしたいものですね。


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。


編集:SIJIHIVE TEAM


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