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実は多民族国家!中国の少数民族について知ってみよう


背景に山々とカラフルな布が風にはためく中、伝統的な衣装を身にまとった少女が穏やかな表情でこちらを見つめている。

皆さんは「中国の少数民族」と聞くとどんなイメージを持つでしょうか?チベット族やウイグル族を想像する人もいれば、タイやラオスなど国境に接するエリアに生活する人々をイメージする方もおられるかもしれません。


時に「抑圧」や「貧困」などネガティブな文脈でとらえられがちな中国の少数民族ですが、今回の記事は政治的な話は抜きにして、彼らの文化を知る魅力についてご紹介します。




少数?民族...?

中国の多様な民族衣装を身にまとったキャラクターたちが描かれたイラスト。鮮やかな色彩と細かい装飾が特徴で、それぞれの民族の文化的な特徴が表現されている。

言うまでもなく、中国のマジョリティは全人口の約91%(2020年)を占める漢民族です。55の少数民族に属する人は全人口の9%であり、言い換えれば中国人の約10人に1人ということになります。


「少数民族」というと、「辺境」や「自治区」に居住している印象があるかもしれませんが、私がかつて中国の大学で講師をしていた時も、同僚の先生や教えている学生の中にも少数民族の方はたくさんいらっしゃいました。


しかも、中国の人口のうちの「9%」ですから、その数は約1億3,000万人であり、日本の人口とほぼ同じです。そして、少数民族のうち、もっとも人口が多いのはチワン族(壮族:Zhuàngzú)で、その数は約2,000万人とも言われていますから、もはや数だけみれば「少数」民族とはいえない気もしますね...。


ちなみに人口数第2位の少数民族はウイグル族(维吾尔族:Wéiwú'ěr zú)で約1,200万人、第3位は回族(回族:Huízú)で約1,100万人、第4位はミャオ族(苗族:Miáozú)も同じく約1,100万人、第5位は満州族(満族:Mǎn zú)で約1,000万人と言われており、ここまでですでに6,400万人になります。


では、逆に人数が少ないのはどんな少数民族なのでしょうか?もっとも少ないのはタタール族(塔塔尔族:Tǎtǎ'ěr zú)で人口はわずか3,500人といわれています。さらに人口1万人以下の少数民族を挙げると、ローバ族(珞巴族:Luòbā zú)が約4,200人、ホジェン族(赫哲族:Hèzhé zú)が約5,400人、オロチョン族(Èlúnchūn zú)が約9,200人といった具合です。



チワン族の「対歌」とは?

中国の少数民族チワン族の女性が、伝統的な衣装を身にまとい、カラフルな三角形の菓子を載せた皿を手に持っている様子。


少数民族の魅力的な文化をいくつかご紹介しましょう。たとえば、チワン族の大部分は中国の南にある「広西省チワン族自治区」に居住しています。チワン族特有の習慣として「対歌(Duì gē)」がありますが、これは青年の男女が結婚相手を見初めるために即興で行われる「歌の掛け合い」です。


毎年3月3日はチワン族の墓参りの日で、墓前に料理を並べて、爆竹を鳴らし、墓に向かって三回礼拝したのち、供え物を皆でその場で食べた後に「対歌」が行われていました。


かつては歌唱力の如何によって「モテ度」が測られたようですが、現在は「対歌」は観光相手に披露されることはあっても、実際に若者たちが「対歌」に参加することはほとんどなくなったようで、この歌合戦に参加するのは中高年のみになってしまったとのことです。


「対歌」の動画はこちら:




ナシ族の「トンパ文字」がエモい

中国の少数民族ナシ族のトンパ文字が緑のインクで茶色の大きな板に描かれている

ナシ族(纳西族:Nàxī zú)はミャンマー、ラオス、ベトナムと国境を接する雲南省や四川省に住んでいる少数民族で、中国内に約30万人いるといわれています。


ナシ族は現在、世界で唯一「象形文字」を使い続けている民族です。象形文字というと、漢字の祖先である甲骨文字や古代エジプトのヒエログリフを思い浮かべる方も多いと思いますが、ナシ族は今でも非常に絵画的で約1,400からなる象形文字「トンパ文字」を使用しているのです。もっともトンパ文字を使いこなせる人は少なく、普段は漢字が使用されているようです。


トンパ文字が難しい理由の1つに、文字一つひとつに重層的な意味合いがあるという点です。例えば「女」というトンパ文字は「大きい」という意味も持ち、「男」には「小さい」という意味も含みます。ここから分かるのは、ナシ族が母系社会だということです。


そして、このトンパ文字によって書かれたのが、西暦7世紀に成立したとされる「トンパ教」です。トンパ教は多神教で、万物には精霊が宿るとし、その数は1,500を超えるといわれます。その中に「シュ」という神が登場しますが、自然界の主宰者でありながら、至るところに宿っているとされています。また、この「シュ」は人間の債権者のような存在だそうです。


つまり、人間は「シュ」に対して負債を追っているような状態です。そして、「シュ」は災害や病という形で報復しようとするため、人間は儀礼を行って備えものを捧げなければならないというわけです。




少数民族を取り上げた映画

中国・湖南省の鳳凰古城を写した風情ある水辺の町並みと伝統的な建築が広がる景色。

中国の少数民族の文化や、彼らを取り巻く状況を理解する助けになるのが秀逸な映画たちです。たくさんありますが、ここでは3本だけご紹介します。


1本目はユグル族(裕固族:Yùgù zú)を題材にした『僕たちの家(うち)に帰ろう(2015年)』。ユグル族は中国内に約1万4,000人しかいないといわれていますが、この映画はユグル族の幼い兄弟の冒険と成長をテーマにした作品です。ユグル族の生活や文化、古代シルクロードの一部としてかつて繁栄した中国北西部の河西回廊(かせいかいろう)を舞台に描かれる美しい自然も魅力です。


2本目はハニ族(哈尼族:Hāní zú)の少女をテーマにした『雲南の少女 ルオマの初恋(2007年)』。ハニ族は雲南省西南部に住む少数民族で、人口約144万人。ミャンマー、タイ、ラオスでは「アカ族」として知られています。

映画は、都会からやって来た写真家を目指す青年に心惹かれるハニ族の少女のお話です。ハニ族の少女が身に付ける民族衣装がとても美しく、印象的です。


そして、3本目はクリント・イーストウッドの『グラン・トリノ(2008年)』。この映画には、中国国内では「ミャオ族」として知られる「モン族」が登場します。ラオスではモン族がベトナム戦争中に CIA に協力して共産勢力と戦ったものの、結局ラオスで共産政権が樹立されると、多くのモン族は国外に亡命。それを受け入れたアメリカでは多くの場所でモン族のコミュニティが形成されました。この映画はそれらモン族の人々と、クリント・イーストウッド演じる元軍人の交流を描いたもので、ラストが印象的な映画です。



まとめ

伝統的な衣装を身にまとった女性たちが屋外で囲炉裏を囲みながら調理や談笑を楽しむ、中国の農村の一場面。

中国を知る上で、少数民族は欠かせないパズルのピースです。上にご紹介した映画以外にもたくさんの魅力的な作品がありますし、雲南省をはじめ、少数民族の文化と触れ合えるスポットへもぜひ出かけてみましょう。




参考サイト:



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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。

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