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中国成語探訪①~中国語、多すぎる「成語」のワケ~数千年の歴史が詰まったその魅力

ある中国人と話していたときのこと、「中国人の多くは特定の宗教を持たないが、自分たちの道徳を律する術は知っている。なぜなら中国語には成語があるからだ」と言われたことがあります。


この成語、日本語のことわざに近いように思えますが、日本人は自分たちのことわざにそんな感覚は持っていないでしょう。また数の面からしても桁違いで、中国の成語は 5 万以上あると言われ、その約 96 % は四文字から構成されています。残りは少ないものは三文字、長いものでは七文字以上、最高十六文字のものもあります。


中国伝統文化の特色の一つとも言われる成語は中国語の醍醐味であり、魅力と言えますが、外国人はついつい敬遠しがちです。今回は、中国語と中国を理解するために成語を避けて通れないワケについて見てみましょう。



成語で会話スキルが決まる?


中国でどんな書店に行っても必ず目にするのが種々の成語関連の書籍です。成語辞典は分厚いものから、持ち運びできるコンパクトサイズまでいろいろと揃っていますし、子供向けには有名な成語を説明した絵本があります。中国では小学生から成語を暗記させられるため、誰もが会話の中で自然に成語を用います。もちろん、だれも 5 万もの成語を覚えてはいませんが、日本人が会話の中で頻繁にことわざを引用すれば「嫌味なやつ」と思われるのとは大きな違いです。


成語にはすべて出典があり、日本人なら名前を聞いたことがある「論語」や「詩経」「史記」、三国志時代の歴史などから取られているものもあれば、古代の作家の文章に由来するものもあります。言い換えますと、成語は、歴史や物語のエッセンスをぎゅっとわずかな漢字に詰め込んだものだということです。そこで中国人は成語を耳にすれば、容易に具体的なイメージを思い浮かべることができるというわけです。


例えば、日本人もよく知っている「四面楚歌」という成語、これは皆さんもご存知のように「助けがなく、周りが敵ばかりで窮地に立たされていること」を言いますが、「楚歌」という部分に歴史が詰まっています。

西暦前 202 年、後に漢王朝を開く劉邦と、楚の国を率いる項羽の戦いの際、現在の安徽省にある垓下(がいか)で起きた物語が元になっています。中国人が「四面楚歌」という成語を耳にすれば、すぐにこのシーン、つまり劉邦の軍に完全に取り囲まれた項羽が四方から自分の国である楚国の歌が聞こえてくるのを聞き、「敵軍に楚国の人間がなんと多いことか」と絶望した場面が浮かんでくるのです。



成語は文化の扉を開ける鍵


なにかメッセージを伝える際に、アルファベットであれば組み合わせによって初めて意味を成しますが、中国語は漢字一つ一つに意味が込められています。同じように長々と道理を話さずとも、その状況に合う成語を使えば、豊富な情報を伝えることができるのが成語です。成語を使うことにより、中国人同士は同じ歴史を共有していることを確認しあい、同胞であることを確認しているようにも思えます。もし、わたしたちがその扉を開けたいと願うなら、「合言葉」を手に入れなければなりません。そして、それが成語なのです。


中国人と会話するときには、臆することなく「合言葉」を使ってみましょう。外国人が成語を覚えて使えば大変喜ばれますし、相手はさらにいろいろと成語について教えてくれるため、会話が盛り上がること間違いなしですよ。



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著者プロフィール

YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、その後約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。現在はアフリカのガーナ在住、英語と地元の言語トゥイ語と日々格闘中。

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