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実は深い翻訳業界⑱~時差対応で夜型人間だけど、社会不適合じゃないからね?



コロナ禍で、いろいろな「当たり前」がひっくり返されました。かつては「当たり前」だった働き方も、いまではそうでなくなったものがたくさんあります。例えば、当たり前だったオフィスでの対面コミュニケーションや共同作業ができなくなり、リモートワークの導入が多くの企業で進みました。


しかし、翻訳業界で働く私たちにとって、世界各地のクライアントやチームメンバーと同じオフィスで打ち合わせなんて以前から不可能でした。そのため、オンラインミーティングやクラウドを使った情報共有もコロナ禍に始まったことではありません。


翻訳業界がコロナ前からすでに「ニューノーマルを先取りしていた」といえば聞こえはよいですが、日本社会のノーマルを当てはめられないのっぴきならない理由があることも事実です。


そう、それは「時差」です。


今回は時差対応で働く翻訳業界の実態と苦悩について、レポートしてみたいと思います。


時差って何?



日本社会で普段生活していると、時差について考えることなんてほとんどありません。せいぜい海外旅行に行くときくらいですが、残念ながらこのコロナ禍でその機会も減っています。


学校などで、世界各地の時間はイギリスのグリニッジ天文台を通る経度0度のグリニッジ子午線を標準としていると習った方も多いと思います。この「グリニッジ標準時(Greenwich Mean Time)」は「GMT」と省略され、「GMT+09:00」(グリニッジ標準時からプラス9時間)などと表記されます。


しかし、1982年以降、世界標準時は GMT ではなく、「UTC」が使われているのもご存じの通りです。これは「Universal Time、Coodinated」の略で GMT をそのまま使っているといつの間にかズレてしまうため、調整され(Coodinated)、いまではセシウムの原子時計を基準にしているとのことです。(セシウムの原子時計とはいかなるものなのかちょっとイメージが沸きませんが‥)


この協定世界時(UTC)を基準にして、世界にはいったいどのくらいのタイムゾーンがあるのでしょうか?


実はその数は39にも上り、キリバス(ライン諸島)が UTC+14 で世界でもっとも早く日付が変わります。もっと遅いのはベーカー島、ハウランド島で UTC-12 ですが、無人島であり、人が住んでいる場所としてはアメリカ領サモア、ニウエが UTC-11 です。


日本は UTC+9 で、韓国、パラオ、ヤクーツク(ロシア)と同じです。ちなみに東西に広大な国土を持つロシアはなんと11ものタイムゾーンを持ち、同じ国内でも最大10時間の時差があるとのことです。


弊社の場合…

弊社の場合、クライアントが世界各地に散らばっていますが、基本的に対応しているタイムゾーンは以下の5つです。


CST/CDT(米国中部標準時)


アメリカのテキサス州などのエリアを含みます。「UTC-6」(夏時間はUTC-5)であり、日本と比べると15時間(夏時間は14時間)遅れているため、あちらの朝9時は日本の同日23時、あちらの夕方6時は日本の朝8時です。そのため、オンラインの MTG をする場合は日本時間朝8時が多いです(いずれも夏時間)。


PST/PDT(米国太平洋標準時)


アメリカのカリフォルニア州などのエリアを含みます。「UTC-8」(夏時間はUTC-7)であり、日本と比べると17時間(夏時間は16時間)遅れているため、あちらの9時は日本の次の日の夜中1時、あちらの夕方6時は日本の次の日の朝10時です(いずれも夏時間)。クライアントの納期設定が日本だと深夜や早朝になることが多いため、たまに夜更かしが必要になります。


中東地域


イスラエルやドバイなどのエリアを含みます。「UTC+2」であり、日本と比べると7時間遅れています。つまり、あちらの朝9時は日本の16:00です。


CET/CEST(中央ヨーロッパ時間)


弊社のクライアントでいえば、デンマークやフランスを含みます。「UTC+1(夏時間は+2)」、日本と比べると8時間(夏時間は7時間)遅れています。つまり、あちらの朝9時は日本の17:00であり、MTG をする場合は夕方開始です。こちらが1日の仕事を一段落しようとしているときに、あちらでは始業開始したばかりのため、「今日中に納品をお願いします」というメッセージが来ることがあり、ちょっぴり萎えてしまうこともあります…。


イギリス


前述したように UTC であるイギリスは日本との時差は9時間、つまりあちらの朝9時は日本の夕方6時です(やはりサマータイムを採用しているため、その場合は1時間ズレます)。


世界中のタイムゾーンを相手にする翻訳業界の苦悩とは?



リモートワークでコミュニケーションの境界は縮まったものの、やはり世界は広いのです。

今は完全に死語になりましたが、バブル崩壊前の1989年、栄養ドリンク「リゲイン」のCMのキャッチフレーズに「24時間戦えますか」というものがありました。


時差を越えて働く翻訳業界はまさに「24時間戦う」人たちですが、すべてのクライアントに合わせていては身が持ちません。


そのため、翻訳会社の場合、海外のクライアントが多ければ、その時間帯に合わせてこちらも待機していくのがスムーズです。また、クライアントも時差をあまり気にせずにメールを送ってくるため、多少待ってもらうのも仕方がありません。それでも、こちらの勤務時間を伝えておけば相手の理解を得やすいですし、中にはメールの署名欄やチャットのプロフィール欄などに「Working from 17pm-5am PST」などと書いておく人もいます。


かつて弊社ブログでも人間の睡眠は「クロノタイプ」といわれる体内リズムに依存しており、それはかなりの程度遺伝子レベルで決められていることを説明しました。それによると、全体の3分の1は夜型人間とのことです。


翻訳業界だけではないと思いますが、国境を越えて働く人たちの中には「選ばれし」夜型人間もいらっしゃるでしょう。そういう方々にとってはむしろ夜中に働いた方が仕事が捗ることもあります。


大切なことは社会の当たり前を自分の当たり前にせず、自分と家族にとって一番心地よい働き方を模索することかもしれません。例え、それが「社会不適合者」とみなされるとしても。


参考サイト:世界の時間と時差


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。


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