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翻訳会社が、本を出す。SIJIHIVE の出版プロジェクトが始まった理由

18 時間前
読了時間: 8分

翻訳会社が、本を出す。


そう聞くと、少し不思議に思われるかもしれません。私たち SIJIHIVE は、日々「誰かの言葉」を翻訳し、編集し、届ける仕事をしている会社です。異文化をほかのカルチャーの人たちにもしっくりくるように調整して伝えるのが仕事の中心になるため、もはや翻訳会社というより「翻訳の枠を超えたコンテンツマーケ会社」のような立ち位置となっています。


私たちがこの本に掲げたテーマは、「人生は、翻訳しきれない」。


この記事では、そんな私たちがなぜ出版に挑むのか、そしてこのプロジェクトにどんな想いを込めているのかをお伝えします。



なぜ翻訳会社が本を出版するのか


このプロジェクトのきっかけ自体は、実は非常にシンプルなものでした。「自分たちで本をつくったら面白いんじゃないか」。そんなアイデアから始まった企画でしたが、実際に動き出す前に、私たちはあらためて「なぜ SIJIHIVE が本をつくるのか」を考えました。そこで見えてきたのが、日々翻訳という仕事に向き合う中で感じてきた、「どうしても翻訳しきれないものがある」という感覚でした。


翻訳の仕事をしていると、いつも原文という、変えることのできないものと向き合うことになります。そこにないことを書き足したり、自分の考えを紛れ込ませたりすることはできません。だからといって、翻訳者が何も考えず、機械的に言葉を置き換えているわけではありません。行間にある温度や、その文化圏でしか通じない前提、書き手が言葉にしなかった想いまで汲み取り、数ある候補の中から最も適切な一語を選び取っていく。そこには、翻訳者なりの解釈や判断がいつもあります。原文から離れることはできませんが、その中で何を汲み取り、どんな言葉を選ぶかには、訳す人の経験や技術が自然と表れます。そこが、翻訳という仕事の面白さであり、難しさでもあります。


しかも、その「正しい訳」は一つに定まるとは限りません。辞書を引けば答えが出るわけではなく、同じ一語でも、誰が、誰に向けて、どんな状況で使っているかによって、選ぶべき言葉は変わります。読みやすく整えたつもりが、原文の条件やニュアンスを削ってしまうこともあれば、正確に訳したはずが、意図がまったく伝わらないこともある。もはや、これって「翻訳できない」のかもしれない。私たちは日々、そうした「唯一の正解のなさ」と向き合いながら、それでも最善と思える一語を選び続けています。


そんな仕事を続けていると、ふと、普段の仕事ではすくいきれない想いや感覚があることに気づきます。誰かの言葉には時間をかけて意図を汲み取り、よりよい表現を探している一方で、自分がこれまで感じてきたことや経験してきたことは、振り返る機会がないまま過ぎていく。


異なる文化の間に立つ仕事をしてきたからこそ、そして一人ひとりがさまざまな背景や経験を重ねてきたからこそ、見えてきた景色や葛藤があります。誰かの言葉を届ける翻訳者としてではなく、一人の書き手として、その感覚を自分自身の言葉にしてみたい。そんな想いが、今回のプロジェクトの出発点になりました。


私たちには「異文化を、いい文化へ。」というスローガンがあります。ふだんはクライアントの言葉を通じてこのスローガンを実践していますが、今回の出版もまた、私たちなりの方法でこの想いを形にする試みのひとつです。


この本を通して伝えたいのは、私たちが日々の仕事やそれぞれの経験を通じて感じてきたこと、そして、その中で大切にしてきたことです。 それらを一冊の本として自分たちの手で形にし、読んでくださる方に届けること。それが、このプロジェクトの一番の目的です。



どんな内容の本なのか


「人生は翻訳しきれない」は、SIJIHIVE のメンバー6名による共著です。ふだんはプロジェクトマネジメントやディレクション、編集、デザインなど、それぞれ異なる役割で日々のクライアントワークに携わっているメンバーが、今回は「書き手」としてこのプロジェクトに向き合いました。誰かの言葉を整える仕事をしてきた私たちが、今度は自分自身の経験を言葉にしてみる。実際に書いてみると、簡単には言葉にできないものがたくさんあると気づきました。


書き方として選んだのは、「リアル × フィクション」というアプローチです。それぞれの書き手が、自分の体験や価値観、心の動きを土台にしながら、その上にフィクションとしての物語を重ねていく。実際にあったことをそのままエッセイとして書くのではなく、自分の人生をフィクションへ翻訳し直すことで、当事者だからこそ書きにくかった部分にも踏み込めるようになりました。実際の経験から生まれるリアリティと、フィクションだからこそ描ける世界。その両方を大切にしながら、6つの物語が紡がれています。


この本のテーマである「翻訳しきれない人生」には、言葉や文化の違いだけではなく、もっと根本的な想いが込められています。それは、自分の人生でありながら、当の自分にすら訳しきれない経験や感情がある、という感覚です。どれだけ言葉を尽くしても、他人に、あるいは自分自身にさえ、うまく言葉にできないものがある。それでも人は、そんな想いを抱えながら、自分の人生を生きていく。そんな感覚が、6つの物語の中で、それぞれ異なる場所や関係性を通して描かれています。


6つの物語は独立していながら、思いがけないところで静かに交差し合う構成になっています。会社のロゴモチーフでもある六角形(ハチの巣 = HIVE)のように、一つひとつ形の違う人生の断片がつながり、やがて一つの幾何学的な模様をつくっていく。そんなイメージを、本の構成そのものに込めました。異文化のあいだで働くとはどういうことか、言葉にできなかった経験とどう向き合っていくのか。ページをめくるうちに、そんな問いが少しずつ浮かび上がってくるはずです。


出版はまず、電子書籍からスタートします。100%オンラインで集まって仕事をしている SIJIHIVE チームならではのプロジェクトにしたい、という思いで、まずは Kindle 出版を、最初の一歩として選びました。



出版までのスケジュール


このプロジェクトは2025年の秋に着想し、2026年の年明けにキックオフしました。まず全員で構成案のブレストを重ね、それぞれの物語のプロット、登場人物、シーン、トーンを整理するところから始まりました。ここで固めた土台をもとに、各自が数ヶ月をかけて実際の執筆に取り組み、初稿を仕上げていきました。


初稿ができあがってからも、道のりはまだ半ばです。社内でのチェックと、メンバー同士がお互いの原稿を読み合うピアレビューを経て、内容や表現に磨きをかけていきました。そこからさらに、プロの編集者による校正というフェーズに進みます。外部の目線を入れることで、書き手の熱量はそのままに、読者にとってより伝わりやすい文章に仕上げていく工程です。


現在は、その編集者によるフィードバックの第一弾を終え、メンバー各自がその内容を原稿に反映している段階にあります。この先には、決定稿への仕上げ、そして出版に向けた最終確認が控えています。


発売時期については、当初の想定から調整があり、現在は2026年12月を予定しています。ここから先の詳しい進捗については、また今後のブログで続けてお伝えしていく予定です。



ブランディング・チームビルディングとしての意味


このプロジェクトは、単に「本を創る」という以上の意味を持っています。


6名のメンバーが、普段の役割や部署を超えて「書き手」という一つの立場に立ち、一冊の本に向き合う。このプロセス自体が、チームビルディングの集大成のようなものになっています。普段の業務では別々のプロジェクトを担当しているメンバー同士が、お互いの初稿を読み合い、率直な感想を伝え合う。ときには、自分では気づかなかった書き癖や、うまく表現できていなかった部分を指摘し合うこともありました。仕事の進行管理では見えてこなかった、お互いの物の見方や、その人が大切にしている想いを知ることで、これまでとは少し違う角度から仲間を知る機会にもなっています。


普段はクライアントの言葉を扱う立場にいる私たちが、今回は自分自身の言葉で発信する側に回る。書くという行為は、思っている以上に自分自身と向き合う作業でもあります。誰かの意図を汲み取り、言葉として届ける仕事をしてきたからこそ、自分の経験を一から言葉にしていく過程にも、さまざまな発見がありました。何を伝えたいのかを掘り下げていく中で、自分が大切にしてきたことや、心に残り続けている経験が、あらためて輪郭を持って見えてくる。一つの章が仕上がったときには、クライアントワークとはまた違う手応えがありました。


この本は、翻訳会社という枠を少し超えて、私たちがどんなことを考え、どんなものを大切にしているのかを知っていただく機会でもあります。「面白いことをやっている会社だな」「この本に共感できるな」。そんなふうに、これまでとは少し違う角度から私たちを知っていただくきっかけになればと、いう想いもあります。そして私たち自身にとっても、「会社として何を大切にしているのか」を、一人ひとりが自分の言葉であらためて考える機会になっています。会社のビジョンやスローガンも、それぞれの物語を通して見つめなおすことで、より身近で、自分たちらしいものになっていく。今回のプロジェクトを通して、そんなことも感じています。



本になった、私たちの想い


「人生は、翻訳しきれない」というテーマには、私たちがこの仕事を通じて何度も感じてきた想いが込められています。言葉を尽くしても、他人にも、自分自身にも、完全には翻訳しきれないものがある。それでも人は、それぞれの想いや経験を抱えながら、日々を生きていく。この本は、そんな私たちなりの気づきを、6つの物語という形にした一冊です。


翻訳会社が本を出すという、少し遠回りに見えるかもしれない挑戦を、私たちは今、楽しみながら進めています。今後も制作の裏側や進捗を、このブログで少しずつお伝えしていく予定です。次にお届けする続報も、ぜひ楽しみにしていてください。


そして発売の際は、ぜひ手に取ってみてください。私たちが「翻訳しきれない」と感じてきたものは、きっと私たちだけのものではありません。6つの物語のどこかに、ご自身の経験や想いと重なるものを見つけていただけたら嬉しいです。



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