中野区役所にて上映!パーキンソン病当事者による希望と再生のストーリーが映画に
- SIJIHIVE Team
- 5月2日
- 読了時間: 4分
2025年4月20日、東京都中野区役所にて映画『いまダンスをするのは誰だ?』の上映会と関係者によるトークセッションが行われました。
パーキンソン病当事者であった中野区在住の故・松野幹孝さんが、発症をきっかけに「昔から大好きだった映画をつくりたい」と一念発起し、友人であった映画監督の古新舜さんに企画を打ち明けたことで映画化が実現。
中野区はかねてより真のインクルーシブ社会の実現に向けてさまざまな取り組みを開催しており、今回の上映はそのメッセージを「中野発」の映画で発信するという意味でも非常に意義深いものとなりました。
今回のレポートでは映画のみどころと、作中そしてトークセッションで語られた数々の名言を少しだけご紹介します。

すべての企業人にこそ見てほしい映画
パーキンソン病を発症した主人公を演じるのは『水曜どうでしょう』のテーマソングなどで知られるシンガーソングライターの樋口了一さん。実はご自身も同じ病を患っており、全国の脳神経内科の先生方と対談したり、数々のメディアで実体験を語ったりという形で病気に関する知識の吸収と普及を実践されていらっしゃいます。
仕事人間だった主人公が、発症を機に自分と向き合っていく様子には胸を打たれるものがあります。当たり前だった毎日が次第に崩れ去っていく絶望と葛藤。会社の組織のしがらみ。自分の人生って何だろう。今の仕事、本当に楽しいの?
たとえば、「病気であることを公表して仕事を失うのが怖い」という思いは多くの人に共通するものですが、この映画はどんな自分になりたいのかを大切にして、自分をさらけ出すことの重要性を教えてくれます。
観客の心と、身体とリアルにつながる感動
今回の上映会で一番心に残ったのが、やはり作品名にもなっている主人公のダンスシーンです(ネタバレ防止のため、詳細は割愛)。作中でダンスを練習するシーンが何度かあるのですが、なんとそのたびに総勢111名*いらっしゃる会場の方々の身体が揺れはじめるのです。
視線は画面にくぎ付けになりながら、自然と身体が踊ってしまう。それだけリアルな、でもどこかアットホームな感情で観客に訴えかけるものを感じた映画でした。これが実話ならではの没入感であり、名監督の手腕が光る点なのだと感じます。
*有料入場者数

「がんばらなくていいんです。大変なことから逃げないで」
上映会終了後には、古新舜監督をはじめ、中野区長 酒井直人さん、中野パーキンソン病友の会会長 秋野文男さん、 ロービジョンフットサル日本代表強化指定選手 中澤朋希さん(中野区在住)など、中野および本作のテーマに縁のある方々によるトークセッションが開催されました(司会進行:ストリートデザイン研究機構理事 大澤宏之さん)。
秋野さんはパーキンソン病を発症して13年。悩んだ末に「自分は病気のことを隠さない」と決心してご友人たちにすべて打ち明けたとか。モットーは人の役に立つこと、あきらめないこと、そして人と比較しないこと。病気に「パー君」という愛称をつけ、年賀状に毎年パー君の近況をしたためている(!)というエピソードも。病気と共にこれからどう生きていくかという信念は多くの人に勇気を与えてくれるはずです。
若干17歳で視力が急激に低下する難病を発症したという中澤さんは、「病気を乗り越えられているかどうかは、正直わからない。今はいろいろな人がいて当たり前の社会(=ダイバーシティ)になっているけれど、助けが必要であることが外見だけでは判断できない人も多い。健常者に見えるからというだけの理由で決めつけずに、皆が違いを自然と受け入れられる社会(=インクルージョン)であってほしい」と、自らの経験をもとに理想の社会のあり方を語ってくださいました。

今回の上映会は当事者・関係者の方々、中野区長、そして古新監督が目指す、「自分に真に向き合う生き方」の探求、そして「すべての人がひとつの社会で暮らせる状態」の実現に向けて、確固たる思いが多くの方に伝わった一日だったのではないでしょうか。
映画『いまダンスをするのは誰だ?』は2023年より全国にて公開。自主上映会などを通じて現在でも作品の魅力を伝える波は広がり続けており、この作品によりパーキンソン病の症状や患者さんの葛藤に対する認知が高まることを願うばかりです。
関連サイト
中野区公式ホームページ(パーキンソン病リハビリ教室も開催中)
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