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実は深い翻訳業界㉚~トライアルの壁を超えろ!


夕陽色の空をバックグラウンドに、切り株の上に立つスーパーマンのレゴ

翻訳者として仕事をするためには、ほとんどの場合、翻訳会社が実施するトライアルに合格する必要があります。しかし、トライアルの壁は高く、何社も受けたのになかなか合格しない場合や、そもそも「トライアルがあるなら自分には無理...」とあきらめたくなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。


今回は、これから新しく仕事を受けようとする方に向けて、トライアルとは何か、合格ラインを超えて翻訳者になるためにはどうすれば良いのかを、トライアルを実施する翻訳会社ならではの視点で説明してみたいと思います。



そもそもトライアルとは?


木製の机の上に置かれたタイプライター、ノート、メガネ、松ぼっくり、ペン、瓶など

トライアルとは、翻訳会社やクライアントがフリーランスの翻訳者に仕事を委託する前に、スキルチェックとして実施する少量のテスト翻訳のことです。トライアルの納期は通常1週間程度ですが、会社によって幅があります。納品はメールでファイルを返送する形でなされ、審査結果は数日で知らされることもありますが、数週間かかることもあります。


トライアルは字数にして数百ワードで、報酬が支払われる場合もありますが、無償でお願いされることも多いようです。そのため、フリーランサーとしては、トライアルばかり受けて結果が出ないのはもちろん理想的ではありません。労力がかかるだけで全然報酬につながらないという経験をされた方もいらっしゃるのでは?また、お金で仕事の価値が測られる訳ではないことは分かっていても、自分の努力が認められていないように感じ、モチベーションも揺らいできてしまうかもしれません。


「受けるなら早く受かりたい!」それが駆け出し翻訳者のすべての願いです。では、一体どうしたらトライアルを突破できるのでしょうか?



トライアルの壁を超えるために覚えておきたい、たった一つの大切なこととは?


黒の背景と上に伸ばす腕とその手首を掴む複数の手

私の友人でさまざまな試験に挑戦してはどれもそれほど時間をかけずに合格してしまう人がいます。ある時、彼に試験に合格する秘訣を聞いてみたところ、「出題者と対話することだよ」と言っていました。


もちろん文字通り試験問題の出題者と「話す」訳ではありませんが、試験問題を通して、出題者が「何を問いたいのか」、その出題意図をつかむことだと言うのです。彼曰く、どの試験問題にも、端々に出題者がイメージする「合格者像」が隠されているとのこと。それゆえ、あらゆる試験問題の王道は「過去問の研究」だそうです。


確かにその通りだと想いながらも、「君のように出題者の意図をつかめないから苦労しているんだよ…」と私は心の中で叫んでいましたが、これは転職者が面接を受けるときにも、フリーランサーが翻訳会社のトライアルに挑戦するときにも当てはまるのではないでしょうか?


つまり、A という翻訳会社のトライアルに受かりたければ、A がどんな翻訳会社でどんな人材を求めているのかを知らなければなりません。そして、それは翻訳会社 B のトライアルとは別のアプローチであるべきでしょう。


しかし、その前提としてまず大切なのは、そもそも翻訳会社は一般的にどんな人材を欲しがっているのかを知ることです。「敵を知り己を知れば百戦危うからず」という孫子の言葉が思い出されます。



トライアルでチェックされるポイント


古いヴィンテージの洋本の開いたページを虫眼鏡で拡大している

では、翻訳会社は一般的にどんな人材を欲しがっているのでしょうか?翻訳会社である以上、外国語能力と日本語力が高いに越したことはありませんが、それよりも翻訳会社がこだわっているポイントがあります。それは「きちんとした仕事ができる人かどうか」ということです。


「きちんとした仕事って言われても…」と思われるかもしれません。もう少し具体化すると以下のようなことが含まれます。


・機械翻訳を使用していないか

・誤字脱字がないか

・文章のトーンや全角・半角・数字の使い方、名称の表記などが統一されているか

・トライアル実施時に提供された参考文献やスタイルガイドなどを遵守しているか

・締切を守っているか


当たり前のことですが、翻訳会社のトライアルはあくまでも「仕事」のトライアルであり、「テスト」ではありません。つまり、短時間で自分の外国語能力を発揮して高得点をゲットすることが目的ではないのです。むしろ、締切まで数日の時間が与えられるため、辞書を使うなり、インターネットで検索するなりして、分からない単語を調べたり、しっくりくる日本語表現を考え抜いたりすべきです。


トライアルに合格する方は与えられた時間をフル活用して、翻訳会社という「クライアント」がどうしたら喜んでくれるのかを考えます。ただ単に自分の高い能力を誇示しようとしたり、「何社も受けてどれかひとつ受かればラッキー」というようには考えません。


もちろん、トライアルの審査基準は会社やプロジェクトによって異なります。通常の翻訳か、マーケティング翻訳かによっても訳し方は変わってくるでしょう。しかし、それも含めて、「トライアルという機会を与えてくれた翻訳会社と対話できる」人こそがトライアルを突破することができるのです。



トライアルの合格率を上げるためにできること


屋根下から草が生えている建物の白いタイルの外壁の建物に描かれたWE LIKE YOU TOOの文字

以上の点に加えて、トライアルの合格率を上げるためにできることを最後に1つお伝えします。


それは、すこしでも不安に思った箇所や複数の選択肢がある箇所にはコメントを付けておくということです。もし、できるなら別途申し送りのファイルを作成して一緒に提出するとなお良いでしょう。必須ではありませんが、「なぜその訳を選んだのか」を説明できる翻訳者の方はポイントが高いです。特に直訳できないために意訳した箇所などはコメントを付けておかないと「誤訳なのでは?」と疑われてしまうかもしれません。


「たかがトライアルなのにそこまでするの…?」と思われますか?確かに何社もトライアルを受ける場合はなかなか難しいかもしれません。でも、覚えておいてください。トライアルとは「翻訳会社と対話すること」なんだということを。そうです、「相手が求めている以上のこと」をやってラブコールを送れば、それは必ず相手にも伝わるのです。




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著者プロフィール



YOSHINARI KAWAI



2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。







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