目の前の簡単な仕事に集中できず、ぼーっと脳のアイドリング状態が続くことはありませんか?
そんなときは、集中力を高めるための革新的なアイディアがないかが気になるところです。「集中力 高める」などのワードで検索してみると、画面には膨大な情報の一覧が表示されます。クリックして見ていくと、どれも「その通り!」とうなずけるものばかり。試したことのあるものもたくさんあるのに、いまだに集中できないのはなぜなのでしょう…?
弊社ブログでも集中力を高めるために、BGM を活用すること、食事や呼吸法、ポモドーロテクニックなどが有効であることを紹介してきました。実際に毎日の生活習慣にうまく取り入れることができれば集中力は高まるはずですが、なかなか実現できないのもまた現実です。
そこで今回はアプローチを変えてみましょう。出発点は「集中できないことってそんなに悪いことなの?」です。
「集中できない=悪」なのか?
集中力を高めるためのノウハウ本やネット上の情報の大前提は「集中していない → 生産性が低い → 仕事がはかどらない → だから集中力を高める方法を伝授しましょう」というもの。確かにオフィスで集中せずに、一日中ぼーっとしている上司をみたら「大丈夫?」と心配になりますし、集中できずに仕事をためてしまう自分のこともあまり好きになれません。
しかし、今回はあえて「集中できないこと」を否定しないで、受け入れることからスタートしてみましょう。
集中できなくなるのも脳の特性
冒頭で脳がぼーっとしている状態を車の「アイドリング」に例えましたが、車のエンジンだってずっとフルスロットルで踏み込み続けることはできません。アイドリングも含め、天候や道路状況、ドライバーの気分などに合わせて緩急をつけて動かすのではないでしょうか?
脳も同じようなところがあります。エンジンですら緩急をつけることが必要なら、「生き物の一部」である脳はなおさらでしょう。車を故障させずに乗りこなすためにエンジンの構造についてある程度知っておくべきなのと同じく、脳を使いこなすためには脳についてもわずかばかりの知識が必要です。
脳の2つのネットワークとは?
実は、脳には CEN と DMN という2つのネットワークが入れ代わりで動いているといわれています。
詳しい説明は省きますが、簡単にいえば、CEN(中央実行ネットワーク)とは外界の対象に注意をむけて計画したり、意思決定をしたりするときに働くシステムです。仕事をハイパフォーマンスでこなしているときは、CEN が優位になっているといえます。
それに対して、DMN(デフォルトモードネットワーク)は何もしていない時に優位になるシステムで、集中できないときには大抵こちらのネットワークが働いています。DMN は「脳のエネルギーの浪費家」「うつ病や不安障害に関係」と、どちらかというと悪者扱いされることもありますが、一方で空想や回想、創造性や独創的なアイディアとも結びついていることが分かってきています。
脳は通常、この実行モードとデフォルトモードが交互に入れ替わる状態だといわれており、もしそうなら後者のオフモードのときに「アクセル全開!」というわけにはいかないことになります。もちろん、朝から晩まで仕事をしない訳にはいきませんし、実際、そういう状態は稀でしょうから、集中できないときは「脳の特性」と考えて受け入れてみてはいかがでしょう。
そうすれば「大事なときなのに、なぜ集中できないの!!」と自分の脳を恨むことも減るでしょう。
「集中できない」を楽しむ
そして、せっかくならデフォルトモード(オフモード)に入った脳を活用してみましょう。集中できないのを自分の能力不足のせいにするのはやめて、静止状態に入った脳を愛おしんであげましょう。なんといっても、このモードに入った脳は創造したり、面白いアイディアを生み出す可能性を秘めているのですから。
白日夢にふけるもよし、ぼーっと落書きをするのもよし、外の緑を眺めるのもよいでしょう。思い切ってパソコンの電源を切って、外の空気を吸いながら散歩するのもおすすめです。もしかしたら、この時間にとんでもないアイディアが生まれるかもしれませんので、思いついたアイディアをメモしてみるのも「集中できない」を楽しむ方法です。
脳を実行モードに切り替えるためには?
といっても、心配なのは脳のオフ状態が優位になりすぎてしまうことかもしれません。デフォルトモードから実行モードに切り替えるためによい方法はないのでしょうか?
ひとつの方法は、手を動かして言葉や図で具体化してみることです。デフォルトモードが抽象的なイメージや直感と結びついているのに対し、実行モードは言語化、具体化することが得意です。「集中できないから手を動かさない」のではなく「手を動かすことで集中できるようになる」と発想を転換してみましょう。
脳を愛おしみながらも、時には追い込んであげないといけません。
脳は心肺機能にも似たところがあります。「今日は体調悪いから走れない」と毎日のジョギングをあきらめることは簡単ですし、実際本当に休まないといけないときもあります。しかし、毎日そんなふうに判断していると、走ることがどんどん億劫になり、心肺機能はどんどん弱っていきます。多少体調が悪くても走り始めれば、心肺機能が次第に喜び始めているのが分かります。「走り始めることで体調がよくなる」のはよく経験することです。
計画は無理なく
「集中できないこと」を受け入れてぼーっとするためには、余裕が必要です。それはちょうど長距離ドライブを無理なく計画することに似ています。
「目的地まで800キロ、時速80キロで運転すれば10時間で到着できる!」、そんな計画を立てる人はいないでしょう。ロングドライブには休憩が必要ですし、途中でおいしいものも食べたいし、きれいな景色をみながらぼーっとする時間も必要です。
同じようにフリーランスでも起業家でも、会社勤務でも自分の脳に「ぼーっとするだけの余裕」を与えてあげましょう。1時間でできると思っても、1.5〜2時間くらいかかると見積もっておくと、自分の脳に厳しく当たることを避けられます。予想外に集中できたら、さらに仕事をこなすもよし、意図的に脳を休ませるのもよいかもしれません。
集中できないときの対処法?結論は....
結論:無理に集中しようとしないこと。手一杯だと感じたときは潔くデスクを離れ、5分間でもよいので何も考えない時間を作りましょう。
多くの研究で、30秒呼吸や瞑想をするだけでもリフレッシュ効果があるとの結果が出ています。
集中力に関する記事をお読みになっている方の中には、「とにかく時間がなくて、1分1秒でも惜しい!」という人が多いかもしれません。リフレッシュなんて時間がなくて到底無理、などと言わず、まずは30秒何もしないことからはじめてみては?
集中できないときは脳の特性を受け入れて、デフォルトモードを活用しましょう。そのときは割り切って、おもいっきりぼーっとしちゃいましょう。それが結果的には高い生産性に結びつくかもしれません。
参考サイト:
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著者プロフィール
YOSHINARI KAWAI
2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。
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