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振り回されない働き方~「突然の作業依頼」に賢く向き合おう

更新日:2021年2月19日


今回の記事のテーマは、最近テレワークを始めた方も、ずっとフリーランスで働いてきた方にも共通するであろう仕事の悩み。それはおそらく「予期せぬことが絶えずやってきて、なかなか仕事に集中できない」ということではないでしょうか?


クライアントからの突然の依頼、すぐに対応しなければならないメールやチャット、子どもの泣き声や突然の電話など、仕事への集中を妨げるものが世の中には数多く存在しています。上記のような外的要因もあれば、将来への不安、夕食のメニューや家族の健康についての悩み、あるいはすぐに SNS をチェックしたい誘惑など、自分の内部で生まれてくるものもあります。




現代人の集中力はなんと「秒」単位


予防医学研究者である石川善樹氏によれば、平均的なビジネスパーソンは 1 時間に 30 回メールチェックをしているとか。この仮定だと現代人が集中できる時間は 8 秒で、金魚の集中力(9 秒)以下だそうです…。さすがに言い過ぎている感じもしますが(そもそも金魚の集中力ってどうやって測定するのでしょうか?!)、集中して仕事することが難しくなれば、究極の没入感が得られる「フロー状態」に入ることもできないため、仕事から喜びや充実感を得るのも難しくなります。


しかし、これを逆に考えると、客観的には「仕事の集中を妨げる」ノイズが絶え間なく飛び込んできている状態でも、主観的にみて「今日はしっかり働けたなあ」と深い満足感を感じることができているなら何ら問題がないということになります。問題は、果たしてそんなことが可能なのか?ということです。


マーケティングの専門家であるロリー・サザーランド氏は、TED トークで「物事はありのままの形ではない。私たちが理解する姿をしている。知覚価値を変えることで、私たちの思う『実際の価値』と同様の満足感を得ることができる」と述べています。

このことから分かるのは、仕事の集中においても、妨害だと思えるものを断ち切るテクニック(一定の時間スマホの電源を切る、同僚にしばらくの時間話しかけないように頼むなど)も活用すべきかもしれませんが、それ以上に私たちの側のマインドセットが重要である、ということです。


わたし個人の経験でも、今日は朝から晩まで外からの情報をシャットアウトして仕事をするぞ、と息まいていたにも関わらず、結局夕方には大した成果もなかったと感じてがっかりしたという経験が何度もあります。

客観的には恵まれた条件だったのに、マインドセットに重きを置いていなかったゆえに失敗してしまった例だと言えるでしょう。



集中できるマインドセットを確立する


では、どのように自分のマインドセットを作り上げたら良いのでしょうか?まず認めなければならないのは、私たちの集中力には限界がある、ということです。例えば、東京大学の池谷裕二教授によれば、人間の集中力が継続するのは 40 分程度であるため、60 分ぶっ続けで仕事や学習をするよりも、15 分を 1 セットとしてそれを 3 回繰り返したほうが効果が高いと述べています。


私たちの脳そのものに限界があるのなら、たとえ短時間でも、早朝など邪魔が入らない環境で作業時間を確保し、そのリソースをいかに最大限活用して高い集中力で仕事をするかがカギになるでしょう。これがうまくできていれば、昼間に様々な用事に忙殺されるとしても、「あ~、集中したいのに!」と現実とのギャップにイライラすることはなくなるはずです。


では、限られた時間をどのように最大限活用できるのでしょうか?ここでも重要なのがやはりマインドセットです。例えば早起きして、6 時から誰にも邪魔されない 1 時間を確保したとしましょう。しかしその 1 時間に「成果」だけを求めていると、思うようにいかない焦りを感じたり、結局予定していた仕事が終わらなかったりすればがっかりしてしまいます。

つまり成果だけ求めても脳は空回りして、そこから実質的な満足感は得られないのです。


Remember, concentrate on the moment. Feel, don't think.(いいか。目の前のことに集中しろ。考えるな、感じるんだ。



この点について、ジョージ・プランスキー博士は「変化はドミノのように起きる。思考が感情を生み、感情が行動を動機づける」と述べており、行動ありきではなく、まず思考を整えることの重要性を強調しています。


興味深いことに、古代ギリシャには時間を表す 2 つの言葉があったといいます。それは時計の針の動きによって表される「クロノス」と、「今、このタイミング」を表す「カイロス」です。前者が客観的(たとえば 60 分という絶対的な時間の単位)で、後者は主観的(自分が感じる 1 時間の長さ)と言っても良いかもしれません。

もし、わたしたちが与えられた 1 時間を「クロノス」とだけ捉えていると、時間の経過と仕事の進み具合ばかりが気になって、結局深く集中することは難しいかもしれません。しかし、マインドセットを「カイロス」にセットして、与えられた時間、その瞬間、今をどれだけ有意義に過ごすかに注力できれば、結果的に仕事に没入することが可能ということになります。

ポモドーロ・テクニックなどの時間管理術でも示されるように、ダラダラと長く作業するのではなく、短時間のインターバルで仕事の効率が上がるという論理は非常に的を得ているのです。



歴史的名著であるビクトル・フランクル著『夜と霧』にも次のような一節があります。


「成功を目指してはいけない。成功は目標にするほど逃げていく。なぜなら幸せと同じで、成功は追い求められるものではないからだ。…幸せは(たまたま)起こるものだ。成功も同じで、気にかけないことによって得られる」


仕事で集中したい、成果を得たいと願えば願うほど、毎日の生活の中でそれは逆にするりと手から滑り落ちていってしまいます。その考えから一旦視点をずらして、自分が確保できる「今、この瞬間」を充実させることに目を向けてみましょう。そこから深い集中が生まれ、結果として多くの成果をおさめることにつながるはずです。




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著者プロフィール

YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、その後約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。現在はアフリカのガーナ在住、英語と地元の言語トゥイ語と日々格闘中。



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