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実は深い翻訳業界㉑~フリーランスでもほぼフルタイム。毎日依頼が来る「外部の社内翻訳者」って?



「フリーランス」と聞くと「自由だけど不安定」というイメージがあります。会社員が逃れられない「9時に出社し17時に退勤する」時間的な束縛から自由にされるのと引き換えに、経済的な安定は犠牲にせざるをえない、それがフリーランスの宿命と腹をくくっている方は少なくないでしょう。


しかしフリーランスでありながら、勤務形態はほぼフルタイムで、毎日依頼がやって来る翻訳者がいます。それが今日のテーマ、「社内翻訳者」です。


ここでは、社内翻訳者とはそもそもどんな仕事なのか、フリーランスとの関係やメリット・デメリットに迫ります。


社内翻訳者とは?



社内翻訳者とは、企業に常駐して働く翻訳者です。雇用形態は正社員、派遣、アルバイトなどさまざまです。しかし、中にはフリーランスでありながら、社内翻訳の仕事をしている人もいます。


最近はリモートワークが普及してきていますが、翻訳者といえど週に何回かは出社を求められることが多いです。社内の資料やホームページの翻訳に関わる場合は業務内容に対する理解が必要になってくるため、関連する会議に出席したり、わからなければ隣の同僚にすぐに確認できたりという環境に身を置いている方が仕事を効率的に進められるでしょう。


フリーランスと社内翻訳の関係



では、普段何気なく使っているフリーランスとはどういうポジションなのでしょうか?


あらためて「フリーランス」という言葉を調べてみると、「自分のスキルを生かして独立して働く人」の呼称だとあります。個人事業主とほぼ同義語のように使われている感覚もありますが、個人事業主が開業届を出した税法上の言葉として使用されているのに対し、フリーランスは会社に雇用されず、自分の商品やスキルを売っています。


つまり、社内翻訳者として企業と雇用契約を締結し、正社員になった場合はフリーランスとはいえません。そのため、厳密にいえば社内翻訳者とフリーランスは両立しないのです。


ただ、中には企業とフリーランスとしてゆるいつながりを持ちながら「フリーランス以上正社員未満」という働き方をしている人がいますし、実際にそれは可能です。そして、企業とのつながりはゆるいですが、社内翻訳者と同じ(もしくはそれに近い)業務量が求められると、案件はパラパラではなく、ほぼ毎日やってくるため、社員のような働き方が求められます。


では、具体的にどのような契約形態なのでしょうか?この場合、もっとも多いのは翻訳会社に登録されている人材を企業に派遣するという方法です。


このビジネスモデルだと、企業側にとっては高度なプロ人材が欲しいけど、自社にフルタイムほどの翻訳業務はなく、業務の発生が不定期だったり、定期的な量の確保が難しかったり、というお困りごとに対応することができます。また、登録しているフリーランス翻訳者にとっては、短期の単価の高い仕事や、継続的な案件をゲットできるというメリットがあります。


また、社内翻訳者として会社と雇用契約を締結するとオフィスへの常駐が求められることもありますが、フリーランスとして関わると完全リモートワークで業務を行っていく場合も多いようです。そのため、通勤やオフィスの時間をできるだけ減らし、自分のプライベートや家族の時間を確保したい人にとってもおすすめの働き方だといえます。


「ゆるい」社内翻訳のメリット


「ゆるい」といっても、企業との継続的なやりとりが発生するため、職責は純粋なフリーランスと比べて大きくなります。フリーランス翻訳者が企業の社内翻訳を継続的に担当する場合のメリットは以下の通りです。


1.単発の案件ではなくクライアントと長期的で密な取引ができる


フリーランスが請け負う案件は、基本的に毎回テーマが異なります。自分なりの得意分野をしっかり伸ばしたい場合でも、そのテーマを続けて担当できるわけではありません。依頼されたら、自分の得手不得手に関係なく、目の前の仕事に取り組まなければなりません。


それに対して、社内翻訳として働くことができれば、クライアントと長期的で密な取引ができます。結果として、類似のテーマにおいて翻訳のスキルを磨くことができます。つまり、日々の仕事を通じて自分の専門性をさらに磨けるのです。


2.企業に務めているような感覚を味わえる


これをメリットと見るかどうかは人それぞれでしょう。ここでいう「企業に務めているような感覚」とは、部署内の他の複数のメンバーとやりとりしたり、部署を越えた多様な人材と一緒に協働し、何かを作り上げていく感覚を指します。


それに対してフリーランスでは、やりとりするのは主にプロジェクトマネージャーだけで、他のメンバーと一緒にチームとして働いている醍醐味は感じにくいでしょう。


3.責任が大きいためやりがいがある


フリーランスの場合は、自分が翻訳した後にレビューや最終確認が入ることが普通ですが、社内翻訳者の職責は大きく、チェックする人材が別にいないこともあります。つまり、自分が翻訳した文章がそのまま公開されることもよくあるのです。


4.翻訳だけでなくさまざまな業務に触れる機会がある


社内に常駐している訳ではありませんが、社内のメンバーとして扱われるため、翻訳以外にもコンテンツのチェックや通訳、ミーティングへの出席など、周辺業務にも参加することが求められます。しかし、それによって視野を広げ、スキルアップを図ることができます。


「ゆるい」社内翻訳のデメリット


1.毎日必ずこなさなければならない業務がある


社内翻訳者が担当する業務は継続的な案件であり、中には毎日必ずこなさなければならない業務も含まれます。


「ゆるい」社内翻訳者として働く場合、多いのは IT 系からの依頼で、他にもマーケティング資料、メルマガ、広告などの翻訳依頼が毎日追加されるため、受け取るタイミングで逐一翻訳していきます。


2.フルタイムの社員と同等の扱いを受けることがある


ここでいう「同等の扱い」とは「共に作り上げる喜びや、やりがい」というよりは、社員と同じようなストレスやプレッシャーを感じることがある、ということです。次から次に案件をこなすことが求められ、納期はタイトになります。当日対応の業務も発生することもあり、フリーランスとして自分でやっている仕事を調整せざるを得なくなります。


3.翻訳業務だけに集中できない


上述したように社内翻訳は他の周辺業務にも携わることが増えるため、フリーランスとして翻訳業だけを生業にしたい人たちにとってはストレスを感じることになるでしょう。また、企業の製品知識や業界特有の用語にも精通しておく必要があり、別途時間を確保しなければなりません。


まとめ


ゆるく企業とつながりながら、フリーランスとして活躍する社内翻訳。特定分野にしっかり精通すれば、自分の専門を作り上げることができるため、フリーランスの翻訳者として独立する際にも大きなアドバンテージになるでしょう。


気になる方は、まずは翻訳会社への登録&トライアルから始めてみてはいかがでしょうか?


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。



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