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The Why Of Work:なんのために働くの?

唐突な質問ですが、あなたが今の仕事をしているのはなぜですか?なんのために働いていますか?

朝起きたらまず身支度をして会社に向かう理由は?別に、一日中好きなことをして過ごしても良いのでは?


米大学教授のバリー・シュワルツ氏による TED ブックス『 Why We Work 』では、「仕事は報酬を得るためだけではなく、仕事そのものが喜びになる」という考え方が綴られています。でも、実際の社会調査では「お金のために働く」という人が過半数。いささか矛盾しているテーマではありますが、この記事が読者の方にとっての「働く」意味を再認識するきっかけとなれば幸いです。



テレワーク定着は必然?偶然?


去年から本格的に始まった「働き方改革」。文字通り「多様な働き方を可能にするために変化を起こす」ことなのですが、なんだかスケールが大きすぎるのも事実。それだけを理由に「働き方を変えよう」と旗を振られてもなんだか気持ちがついて行かない…という違和感をお持ちになったことはないでしょうか?


実際、働き方改革の一環として以前からテレワークが推奨されていますが、長い間なかなか定着しませんでした。ところが、皮肉なことに今回のコロナ禍によって一気にこの働き方が広まったのは思ってもみない変化だったことでしょう。


これは、自分や家族、あるいは従業員の健康、命を守らなければならない、そのためには働き方を変えざるを得ない、という明確な「理由」が生じたためです。

何でもそうですが、従来培ってきた方法や習慣を変えようとするには、自分を説得するための確固たる理由が必要です。ただなんとなく運動不足を解消しよう、ダイエットしよう、早寝早起きをしよう…と目標を立てても決して成功しないのと同じように、わたしたちの働き方を変えるためにも、そうするための理由が必要なのです。


「自分がなんのために、誰のために働いているのか」という部分を抜きにしては、決して働き方を変えることはできません。



「働く」定義の分かれ目


では、この「人はなぜ働くの?」という問題にアプローチしてみましょう。


16 世紀:神のために働く


英語で仕事、職業をあらわす単語はいくつかありますが、たとえば英語の「calling(天職、使命感)」「vocation(callingを感じて選ぶ仕事)」にはどちらも「神から召される、呼ばれる」という概念が含まれています。


これは 16 世紀の宗教改革以降、神と個人的に向き合うようになった人々が勤勉に働き、その成果を得ることで神から認められていることを確証しようとしたことに由来すると言われています。つまり、この時代、仕事は宗教的な意義を含んでおり、究極的には人々は「神のために」働いていました。


18~ 19 世紀:自分や誰かのために働く


しかし、産業革命以降、仕事は宗教的意義を失い、世俗化していきました。近代以前は神が自分の仕事を評価してくれていたのが、近代以降はその主体が「神以外の誰か」に変化し、「自分」か「自分以外の誰か(会社、家族、社会全体)」のために働くという意識が定着したのがこの時代です。


20~21 世紀:お金のために働く


2019 年に「doda(デューダ)」とオリコンリサーチが共同で行った調査によると、日本の 20 代 ~ 30 代の「働く理由」は次の通り。


1 位:「お金のため(生きていくため)」56.3%

2 位:「お金のため(趣味や嗜好品を豊かにしたい)」19.4%

3 位:「お金のため(家族を支えるため)」8.1%でした。


この調査に基づけば、日本の 20 代、30 代の大部分が自分のために働いており、次いで家族という「別の誰か」のために働いている、ということになります。

ちなみに、この調査によると「社会とつながりを持ちたい」「社会の役に立ちたい」と回答した人は合わせてわずか 4% でした。


さて、問題は「自分の生活や趣味のためにお金を稼ぐ」という生き方が私たちを幸福にしているのか、ということです。

毎年 3 月 20 日に国連は「世界幸福度ランキング」を発表していますが、日本は今年 62 位で、ここ 5 年間で 46 位から順位を大幅に下げています。


察するに、「自分のためだけに働いても決して幸福にはなれない」ということではないでしょうか?実際、内閣府の調査でも、ボランティアに参加している人の満足度はしたことがない人よりも高く、またボランティアに参加する頻度が増えれば増えるほど、満足度は増加する傾向が見られました。これは、社会貢献、つまり「誰かのために働くなら幸福感を感じやすい」ということも示しています。



“Happiness is a perfume you cannot pour on others without getting a few drops on yourself.”

(幸福は香水のごときものである。 人に振りかけると、自分にも必ずかかる。)

 ―ラルフ・ワルド・エマーソン



日本でリタイア後も働くことを希望するシニア層が多いことも、人が働く理由が自分とお金のためだけではないことの証拠だといえます。



現実と理想のはざまで


働くのはお金のため、自分のためだけではない ー いかにもありがちな結論だと思われるかもしれませんし、「現実はそんなに甘くない」「理想だけ言われても」という声もあるでしょう。ただ、冒頭で述べたように、働き方を変えるならまず自分の「働く理由」を突き詰める必要があります。それなら現実から離れて、むしろ理想に思いをはせるのもたまには良いのではないでしょうか。


上述の TED ブックスでは、「充実度の高い仕事」としてさまざまな職業が紹介されています。病院の用務員(掃除やリネンの回収などを行うスタッフ)、カーペットメーカー、そして美容師。


あれっ、もしかして意外でしたか?


「どんな職務にあっても幸福・やりがい・希望を見出せる」というのが同書のテーマ。今の仕事を続けるか迷ったときは、なぜこの職業を選んだのか、どんな時にやりがいを感じるか、不満はあるかなど、シンプルな質問をして自分なりの直観的な答えを探してみると良いでしょう。「この仕事に使命感を感じるか」も、あなたにとっての仕事の位置づけを測る良いバロメーターです。



非常事態宣言が解除されて、一旦は進んだテレワークへの流れも一部の大企業を除いては徐々に電車通勤の日々へと戻りつつあるという話も聞きます。理想のプロポーションを思い描いてダイエットに一旦は成功したものの、その後リバウンドしてしまうのになんとなく似ていると感じるのは私だけでしょうか。


働き方についても、(社会全体の改革はさておき)せめて自分の理想を思い描いて、自らの「天職」なるものを描き続けていくことをあきらめないようにしたいものです。



参考サイト:




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著者プロフィール

YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、その後約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。現在はアフリカのガーナ在住、英語と地元の言語トゥイ語と日々格闘中。



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