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旅するように暮らす。ブリコルールに学ぶ「非日常」の秘訣

コロナウイルスにより落ち込んだ観光需要や消費を活性化させようと打ち出された「Go To トラベルキャンペーン」、皆さんは利用しておられますか?


EC データバンクが 2020 年 10 月 7 日にリリースした調査結果によると、「Go To トラベルキャンペーン」をすでに利用した方は 18%、利用予定の方は 8% に留まり、「利用したいができずにいる」と回答した方は 20%、利用予定がない方は 44% にのぼりました。そして、「利用しない」、「できない」と答えた方の約 7 割がコロナウイルス感染への懸念を理由としています。



せっかくお得に旅行できるのに、状況ゆえに行けず悶々としている方も多いと思います。そこでこの記事ではいつもと少し趣旨を変えて、コロナ禍で旅行に出かけられなくても「旅するように暮らす」秘訣をご紹介したいと思います。


今回打ち出されたキャンペーンのネーミングにもう一度注目してみましょう。「Go to Trip」でも「Go to Journey」でもなく、「Go to Travel」です。Trip とは日帰り旅行や出張など目的がはっきりした短期間の旅行であり、期間が長めになると Travel になります。それに対して、Journey には「旅行」よりも「旅」という日本語がしっくりきます。Journey は長期間にわたる旅の行程やプロセスに重きを置いた言葉であり、人生や成功に至る道のりをこの単語で表すこともあります。


さて、私たちが「旅」と「旅行」にそれぞれ求めるものは異なるのではないでしょうか?旅行には多くの場合、美しい景色を見たり、ご当地グルメを食べたりするといった明確な目的があります。こうした「予定調和」な旅行に対して、旅はプロセスが重要であり、何が起きるかは予測不能ですし、むしろそうした偶然を求めて私たちは出かけていきます。


このように言葉のニュアンスを突き詰めると、わたしたちが日常で求めているのは旅行よりも、旅で味わえる非日常であり、「Go to travel」よりも「Go to Journey」なのではないかと思います。そして、有難いことに美味しいものや美しい景色は実際にその場所に物理的に移動しなければ体験することができませんが、「偶然」や「予測不能」は必ずしも身体的移動を伴いません。つまり、テレワークでも、ステイホームでも、「Go To Journey」は可能であり、「旅するように暮らす」ことができるのです。


見知らぬ土地に旅に出かけ、道に迷ってしまった自分を想像してみてください。今晩泊まるホテルも決まっていないのに、すでに辺りは暗くなってきました。現地語は話せませんが、近くを歩いている優しそうな人に片言の英語で話しかけ、助けが必要であることを伝えます。相手はこちらの意図をくみ取ってくれて、知り合いが経営しているホテルを教えてくれ、その上そこまで連れて行ってくれます。だまされているのでは、と最初は不安でしたが、結果的には料金もリーズナブル、清潔なホテルでゆっくりと時間を過ごすことができました。

予測不能の事態に偶然出会った人の助けを借りて、試行錯誤しながら満足の行く結果が得られた ー これこそが旅の醍醐味です。


このように、その場の状況やあるものを活用してピンチを切り抜ける人のことを「ブリコルール(bricoler)」と言います。もともとはフランスの文化人類学者レヴィ・ストロースが「悲しき熱帯」の中で紹介しているインディオ(アメリカ先住民のうち、南米大陸に在住している人たちのこと)の習慣を「ブリコラージュBricolage」と呼んだことに由来しています。


インディオたちはジャングルを歩いていて何か見つけると、それがすぐに役立つかどうかわからなくても「いつかは役立つかもしれない」として収集する癖があり、それを見たレヴィ・ストロースは「繕う」「日曜大工」を表すフランス語の「ブリコラージュ」という言葉を用いました。そして、このブリコラージュをする人がブリコルールというわけです。現在ではイノベーションを生み出す人を指して用いられることもあります。



今、テレワークの毎日を送っていても、職場とスーパーにしか出かけない日々を送っていても、日常にこのブリコラージュを取り入れて、ブリコルールになることが自分なりの「Go To Journey」に出かける秘訣です。


例えば、家で読書をしているときに、仕事に役立つ実用的なテーマのものばかり選ぶのではなく、宇宙や歴史を扱った、すぐには役立たなそうだけど面白そうな書籍を選んでみるのはどうでしょうか?あるいは買い物に出かけたとき、いつも購入する食材だけでなく、調理したことがないような珍しい食材を使ってみることもできるでしょう。さらには、仕事上のオンラインのやりとりだけでなく、何十年も連絡していない同級生や親族に手紙を書いてみるのも面白いかもしれません。

こうした思いつきが時間の経過とともに繋ぎ合わされて、予想もしなかったような発見や驚きを生んだ時、日常は非日常へと鮮やかに変化します。


「コロナが終息したら旅行に行って美味しいものをたくさん食べたい!」と将来の「Travel」に期待するのも良いですが、今、この場からすぐ出かけられる自分なりの「Journey」もきっと悪くないと思います。


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著者プロフィール

YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、その後約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。現在はアフリカのガーナ在住、英語と地元の言語トゥイ語と日々格闘中。


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