中国語のつなぎ言葉(フィラー)とその使い方

皆さんは「フィラー(filler)」という言葉をご存じでしょうか?fillは「満たす、詰める」という意味で、filler は「(全体を満たすために使われる)詰め物」のことです。様々な分野で使われる用語ですが、今回取り上げたいのは会話の中で用いられるフィラーです。



会話の「全体を満たすために使われる」フィラーって一体何のことでしょうか?それは会話の隙間を満たすための「えーと」とか「まあ」といったつなぎ文句のことです。英語では

「well」とか「you know」などが代表的なフィラーとして挙げられますが、今回は中国語のフィラーについて考えてみます。


つなぎ言葉の役割


さて、そもそもフィラーについて理解するとどんなメリットがあるのでしょうか?そのことを理解するために、フィラーの具体的な機能について日本語で少し考えてみましょう。


例えば、新幹線に乗車し、席に座り、出発を待っているとします。すでに車内で弁当と缶ビールを購入し、これから食べ始めようとしたその時、別の乗客がつかつかとやってきます。そして、自分の乗車券の座席番号を示し、「間違ってますよ」と指摘されます。座席番号を示された以上、席を移動するしかないのですが、恥ずかしいやら後味が悪いやら、複雑な気持ちになります。


でも、そこで相手がフィラーを使ってくれたらどうでしょう?例えばこんな感じです。


「あのー」

「はい」

「えーと、座席番号っていくつですか?」

「あれっ、間違ってました?」

「なんか…そうみたいです」

「すみません!すぐに移動します」


この会話に登場する「あのー」「えーと」「なんか」がフィラーであり、その言葉そのものに意味はありませんが、挟み込むことで円滑なやりとりがなされていることが分かると思います。日本語を学習している海外の方がこうしたフィラーを使いこなしていると、「日本語らしい」「日本人が話しているみたい」と感じるのではないでしょうか。私たちが中国語のフィラーを活用することにも同じメリットがあります。



中国語特有のフィラー表現


中国語のフィラーにもいろいろありますが、その大部分を占めるのは指示詞型のフィラーです。指示詞とは日本語の「これ」「あれ」のことで、中国語では「那( na,ne )」、「这( zhe )」を使った「那个( Nàgè )」、「这个( zhège )」、「那种( nà zhǒng )」、「这样( zhèyàng )」などのことです。

その中でも圧倒的に使用回数が多いのが「那个( Nàgè )」であり、中国語っぽく話すためにはこのフィラーをうまく使いこなせるようになりたいものです。代表的な3つの使い方について見てみましょう。


1.思い出したいのに思い出せない時の「那个」


思い出話に花が咲き、盛り上がっているのに具体的な地名や場所、人名が思い出せないとき、「那个」を使って記憶を辿る作業をします。日本語の「ええと」「何だっけ」のような機能です。例えば、


A:上次我们去了那个地方,那个,挺好玩的。

(Shàng cì wǒmen qùle nàgè dìfāng, nàgè, tǐng hǎowán de.

 「この前行ったあの場所、ええと、すごく楽しかったね」)。


B:你说张家界,对吧?(Nǐ shuō zhāngjiājiè, duì ba.「張家界でしょ?」)


A:对对(Duì duì!「そうそう」)!



2.話題を換えたいときの「那个」


例えば、

A:你最近工作怎么样啊?(Nǐ zuìjìn gōngzuò zěnme yàng a?「最近、仕事どう?」)


B:挺好的。(Tǐng hǎo de「順調だよ」)


A:噢,挺好。那那个你们公司那个,哪儿来着

(Ō, tǐng hǎo. Nà nàgè nǐmen gōngsī nàgè, nǎ'er láizhe

「じゃあ、良かった。あれ、で、会社ってどこだったんだっけ?」)


B:北京( Běijīng「北京だよ」)


仕事について話していましたが、働いている場所について話題を方向転換するときに「

那个」を使って、相手にその心の準備をさせていることが分かります。



3.会話を主導権が自分にあることを示す「那个」


この「那个」は文末に使われて、まだ話したいことがあるから、会話の主導権を渡したくないという意思を表すのに使います。例えば、


A:你不用说(Nǐ bùyòng shuō「もう言わないで」)


B:不是,你这样的话就不对,那个…

(Bùshì, nǐ zhèyàng dehuà jiù bùduì, nàgè…「いや、そんな風にいわないでよ、だって…」)


自分も気持ちや感情がまとまっていないため、理路整然とは話せないのですが、相手を説得したい、そんな状況で思わず「那个」が口をついて出てきます。


「那个」にはもちろんつなぎ言葉としての他にも用法がありますが、いずれにしても感じるのは日本語のフィラーが相手との衝突を避けるために用いられることが多いのに対し、中国語ではその機能はさほど大きくないということです。フィラーの使い方ひとつとっても、言語的特性の違いを感じますね。


今挙げた3つに着目して中国語の会話を聴いてみると思った以上にフィラーが使われていることに気づくと思います。そして、自分でも真似してより「地道(Dìdào)= 本物」な中国語を目指してみませんか?


参考:http://human.kanagawa-u.ac.jp/gakkai/publ/pdf/no198/19805.pdf

https://www.tiu.ac.jp/about/research_promotion/kiyou/pdf/18_clinicalpsychology_3.pdf


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。

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