2020 年 3 月現在、ビットコイン投資に関する最もホットな話題は、「半減期」です。
ある人は「半減期を迎えてビットコイン価格は急騰する」と言いますし、またある人は「そんなことはない」と否定します。
本稿では、ビットコイン価格が半減期によって上昇するメカニズムを、経済学の「供給曲線」と「需要曲線」を使って説明します。
供給曲線の導出
ビットコインのマイニングにおいて、マイナーに利益が出る損益分岐点は、およそ 7,000 ドル前後(2020 年 2 月現在)といわれています。
これは「平均的なマイナー」を想定したもので、すべてのマイナーにとっての損益分岐点というわけではありません。
1 BTC を 4,000 ドルのコストでマイニングできるマイナーもいますし、10,000 ドルかかってしまうマイナーもいます。
説明の簡略化のため、世界のマイナーが🐶🐭🐱🐼の 4 人からなるとします。
すると、
🐶「1 BTC マイニングするのに自分は 4,000 ドルかかるよ」 🐭「1 BTC マイニングするのに自分は 6,000 ドルかかるよ」 🐱「1 BTC マイニングするのに自分は 8,000 ドルかかるよ」 🐼「1 BTC マイニングするのに自分は 10,000 ドルかかるよ」
というふうに個人差があります。
(※マイニングコストは、電力料や家賃、設備投資額によって変わってきます)
これは、言い換えれば、
🐶「1 BTC=4,000 ドル超ならマイニングから利益が出るよ」 🐭「1 BTC=6,000 ドル超ならマイニングから利益が出るよ」 🐱「1 BTC=8,000 ドル超ならマイニングから利益が出るよ」 🐼「1 BTC=10,000 ドル超ならマイニングから利益が出るよ」
ということです。
さらに言い換えれば、
🐶「1 BTC=4,000 ドル超ならビットコインを売りたいな」 🐭「1 BTC=6,000 ドル超ならビットコインを売りたいな」 🐱「1 BTC=8,000 ドル超ならビットコインを売りたいな」 🐼「1 BTC=10,000 ドル超ならビットコインを売りたいな」
となります。
これを図示したのが下図です。
(※「横軸⇒縦軸」ではなく、「縦軸⇒横軸」に見ます)
ここで、ある価格水準(Price)に対する「ビットコインを売ろうとする総量」(Quantity)の座標を結んだ線が、『ビットコインの供給曲線』になります。
【ビットコインの供給曲線】
以上は、ビットコインの売り手側の事情でした。
需要曲線の導出
一方、買い手側の事情も見てみましょう。
世界のビットコインユーザーが🐰🐻🐷🦁の 4 人からなるとします。 すると、
🐰「1 BTC=8,000 ドル未満なら買いたいな」
🐻「1 BTC=10,000 ドル未満なら買いたいな」
🐷「1 BTC=12,000 ドル未満なら買いたいな」
🦁「1 BTC=14,000 ドル未満なら買いたいな」
というふうに、「最大限支払ってもよいと考える金額」(WP)には個人差があります。
4 人の WP に差があるのは、将来のビットコイン価格に対する予想が異なるからです。
これを図示したのが下図です。
(※「横軸⇒縦軸」ではなく、「縦軸⇒横軸」に見ます)
ここで、ある価格水準(Price)に対する「ビットコインを買おうとする総量」(Quantity)の座標を結んだ線が、『ビットコインの需要曲線』になります。
【ビットコインの需要曲線】
均衡価格
供給曲線と需要曲線の交点が、均衡価格(E)となります。
【ビットコインの均衡価格】
半減期が与える影響
半減期とは、「仮想通貨のマイニングでもらえる報酬が半分になる期日」をいいます。
この日を境に、マイナーたちは、マイニングにかかった労力と費用の対価として、以前の半分しかビットコインをもらえなくなります。
もらえる量が半分に減ったということは、ビットコイン価格は倍にならないと、利益が出ません。
なので、マイナーたちは、
🐶「1 BTC 4,000 ドル超なら売りたいな」
🐭「1 BTC 6,000 ドル超なら売りたいな」
🐱「1 BTC 8,000 ドル超なら売りたいな」
🐼「1 BTC 10,000 ドル超なら売りたいな」 ↓
🐶「1 BTC=8,000 ドル超なら売りたいな」 🐭「1 BTC=12,000 ドル超なら売りたいな」 🐱「1 BTC=16,000 ドル超なら売りたいな」 🐼「1 BTC=20,000 ドル超なら売りたいな」
と考えるようになります。
供給曲線は上方にシフトし、新しい均衡点が決まります。
【供給曲線のシフト】
均衡価格が上昇していることに、注目してください。
次回の半減期は 2020 年 5 月にありますが、半減期はその後も 3 回あります。
半減期を迎えるたびに、供給曲線は上方にシフトするので、2029 年までの間、ビットコイン価格は継続的に上昇することが見込めます。 【2029年までの供給曲線の段階的シフト】
世界の著名ファンドマナージャーたちが、ビットコインの投資戦略として「2030 年までのHODL(長期保有)」を推奨しているのは、そのためです。
「オレ(BTC)は半減期をあと 3 回も残している‥‥その意味がわかるな?」
以上は、半減期に関する売り手側の事情です。
再び買い手側の事情へ
売り手の思惑とは関係なく、買い手側の事情も一変することがありえます。
たとえば、ドルやユーロといった法定基軸通貨を発行する政府が、ビットコインを(実質的に)禁止する可能性は、十分ありえます。
ビットコインは、既存の権力者たちにとって、自分たちの権益をおかす「目の上のたんこぶ」のような存在だからです。
その場合、強大な権力にはいかんともしがたく、ビットコインは「電子ゴミ」となるでしょう。
ビットコインユーザーたちは、
🐰「1 BTC=1 ドルでもいらないよ」
🐻「1 BTC=1 ドルでもいらないよ」
🐷「1 BTC=1 ドルでもいらないよ」
🦁「1 BTC=1 ドルでもいらないよ」
となってしまいます。
買い手は失ったビットコインの価格は暴落します。
「織り込み済み」って何?
織り込み済みとは、「好材料や悪材料の影響が、すでに金融商品の価格に反映された状態」を意味します。
この「織り込み済み」という概念が、半減期に関する最大の論点となります。
「100% 織り込み済み」とは、現在の価格は、2029 年の半減期時の供給曲線のシフトまですでに織り込んでいる、という考え方です。
実際、投機筋には、「アナウンス済み」かつ「実施が確実」な材料については、「事前に100% 織り込まれる」と予想する向きが多いです。
私見を述べれば、将来の半減期の影響は、6 割程度しか織り込まれていない、と考えています。
なぜなら、株式等の金融商品に見られる「織り込み済み」現象は、主として買い手側の期待によって生じるものですが、ビットコインの場合は、半減期時の価格変動は、主に売り手側の事情によるものだからです。
買い手側は、将来の価格上昇を見込んでいち早く買い始めることができても、売り手側は、将来の価格上昇を見込んで「売り控え」をすることは、運転資金確保のため、なかなか難しいのではないかとみています。
また、先に述べたビットコインへの規制強化のおそれは、最大のリスク要因となりますが、大きなリスクが存在する場合は、100% の織り込みは不可能です。個々人の予想が異なるため、均衡価格が正確な未来予測とはならないからです。
よって、仮に 2029 年までに、ビットコインに対する規制が強化されず、逆に容認する方向で動いた場合には、ビットコイン価格は高騰すると考えられます。
ではどう買うべきか?
いわゆる『ドルコスト平均法』で、毎月の貯金額の「1~3% 程度」をビットコイン投資に振り向けるとよいでしょう。 これを日割りにして、毎日同じ時間に同じ額だけ積み立てます。このやり方が、迷いがなくて良いです。
このビットコインの「積み立て投資」を始めるのは、今からでも遅くありません。
あなたの資産ポートフォリオに「数%程度」のビットコインを組み込むことは、ビットコインがハイリスク商品であるにも関わらず、むしろポートフォリオ全体のリスクを改善するというパラドクスが、数学的にも証明されています。
筆者自身は、ギャンブラー気質なので、毎月の貯金額の「半分以上」をビットコイン購入に充てています。
大損する可能性もあるが、大金持ちになる可能性に淡い望みをかけているわけです。
2030 年、晴れて大金持ちになった暁には、妻に得意顔でこう言いたいと思っています。
「奇貨居くべし」
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著者プロフィール 木本隆義(Takayoshi Kimoto) 1973 年、横浜生まれ。慶応大学商学部卒業、名古屋商科大学大学院マネジメント研究科修了(MBA)。タイで海外進出支援のコンサルティング会社を経営。仮想通貨歴は、草コイン・アルトコイントレードを経て、現在はビットコインを積立投資中。FX も得意。
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