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中国文化に学ぶ「食すこと」の真意

締め切りや納期が迫っていたり、仕事が立て込んできたりすると、限られた時間をどのように配分するか選択を迫られます。そして、ついついやってしまうのが食事を後回しにしてしまうことではないでしょうか。コンビニのおにぎりをかじりながら PC に向かい続けたり、場合によっては食事をあきらめたりする方もおられるかもしれませんね。しかし、それで能率が上がるかといえば、逆に空腹ゆえにいらいらしてしまうことも…。


この点、中国人は食に対する半端ないこだわりをもっています。今回は中国文化から「食」へのこだわり、といっても「何を食べるか」ということではなく、「食べること」そのものへのこだわりから、学んでみましょう。



すべての源は「食」にあり


中国各地のレストランで頻繁に見かける成語があります。「民以食为天(Mín yǐ shí wéi tiān)」、つまり「人民にとって食こそが最重要だ」という意味です。中国人は、自分たちの食を決して諦めないゆえに、彼らが行くところには世界どこでも中華街が形成され、そこには中華料理店と中華食材を扱うマーケットが必ずあります。


また、食事の時間を何よりも大事にするのも中国人の特徴でしょう。どんなに忙しくても、仕事前には麺やお粥、肉饅頭などで朝食を済ませ、12 時前になるといそいそと仕事を片付け、昼食にでかけます。そして、夕食は早めの時間に済ませ、場合によっては「夜宵(Yèxiāo)」、つまり夜食まで平らげます。一日のうちいったいどれだけの時間、食事のために費やしているのか、日本人からしてみるともっと食事をシンプルに済ませてもいいのでは、と思ってしまいますが、中国人は食に関して諦めないのです。


なんだか不合理なように思えますが、そこで思い出すのが中国人が春節のためにかけるこだわり。毎年、大変な思いをして列車を乗り継ぎ、実家に帰り、必ずそこで1週間過ごす、ある中国人はこの習慣を中国人にとっては「句読点」のようなものだと言っていました。どれだけ仕事が忙しくても、春節の間だけは手を止めて、家族とゆっくり過ごす、この同じことを中国人は食事を通じてやっているような気がします。つまり、食事は中国人にとって、日常生活の句読点のような意味を持っているのです。



張り詰めた一日を「食」で緩ませる


行動経済学者のセンディル・ムッライナッタン氏は「いつも時間がないあなたにー欠乏の行動経済学」の中で、時間の欠乏が人間の処理能力を低下させ、仕事の能率を下げるため、予定をいっぱいに詰め込むのではなく、スラック(たるみ)を作っておくことの重要性を強調しました。その例として、毎週決まった時間に問答無用でやってくるユダヤ人の安息日を挙げていますが、中国人によって食事の時間はずらすことなど考えられない「安息日」のようなものとも言っていいのかもしれません。


また、中国人が必ず時間がくれば食事をするのには別の効用もあります。かつて中国に住んでいたとき、打ち合わせがあって友人宅を訪問し、食事の時間が近づくと、どの友人も必ず食事を食べていくように招いてくれました(食事を期待してあえてお昼近くに訪問した訳ではありませんが…)。日本人であれば打ち合わせが終わるまで食事を待つのかもしれませんが、彼らは食事最優先。そして、そこに友人や同僚、顧客も巻き込んで、交流の機会としてしまうのです。


悲しいかな、最近はファーストフードやデリバリーサービスの台頭で、若者たちは以前のように食事の時間を重視しなくなり、食を中心に築かれてきた中国文化も徐々に変わりつつあります。それでも、自分が主体的に時間をコントロールしなければ、メールやスマホがどんどん侵食してくる時代、どんなに忙しくても食事という句読点で区切ることを忘れないようにしたいものです。



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著者プロフィール

YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、その後約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。現在はアフリカのガーナ在住、英語と地元の言語トゥイ語と日々格闘中。

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