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正々堂々と休める?「プレミアムフライデー」は得策か


「プレミアムフライデー」という言葉、ご存じでしょうか?「毎月末の金曜日は午後 3 時には退社して、特別で豊かな週末を過ごそう」という取り組みで、2017 年 2 月から経済産業省と経団連の主導で始められました。実際は早目に仕事を終えたら街に繰り出して買い物をしてもらい、個人消費を喚起しようという狙いがあるようですが、残念ながら今のところ実施率はかなり低いようです。



2019 年 7 月に発表された新生銀行の調査によると、プレミアムフライデーの導入は平均してわずか 3.3%。従業員 5000 人を越えるような大企業だと 6.4% でしたが、従業員数が少なくなればなるほど導入率も下がり、10 人以下の企業であれば 1.1% まで下がってしまいます。もはや多くの日本人にとって「あってもなくても自分には関係ない」制度といった位置付けかもしれません。



「プレミアム」にできないワケ


その原因について尋ねると、聞こえてくるのは、「もし毎月末の金曜日早目に仕事を切り上げたら、そのしわ寄せが結局次の週の自分の身に降りかかってくる」という声です。また、「月末はただでさえ忙しいのに、早めに切り上げるなんて無理。どうせやるなら月初に」という意見もあります。


プレミアムフライデーが実際に消費を刺激しているのか(とりわけこのコロナ禍の中においては)分かりませんが、この制度が「働き方改革」の一環として一石を投じているのは確かかもしれません。つまり、プレミアムフライデーを活用できないのは仕事が多すぎる、もしくはそもそも仕事の量をコントロールするつもりがないことが原因の一つだと言えるでしょう。


仕事時間が長すぎて休みがとれない、というのは日本だけに限ったことではなく、中国でも見られます。そして、おそらくもっと深刻です。

数年前、「996.icu」という言葉がネット上で流行しました。これは朝 9 時から夜 9 時まで週 6 日勤務することを指し、病気になったときは ICU に運ばれるほど重病で取返しのつかない状態になっている…ということを暗示する言葉です。こうした傾向は中国の IT 企業でとりわけ顕著で、中には「996」よりもさらに過酷な「8117」(朝 8 時から夜 11 時まで一日 14 時間労働を週 7 日休みなく行う)勤務を容認している企業もあると言います。


もちろん、中国にも労働基準法はありますが、お構いなしにブラックな働き方がまかり通っていますし、社員側も短期間に集中的にお金を稼ぎたいという思惑がありますので、いまのところこうした働き方が改善されることはないと思われます。日本がバブル期に 24 時間働き続ける企業戦士を良しとしていたのと同じです。実際、その当時の日本人の働き方が今でも中国人にとっては印象深いようで、中国に住んでいたときには、「日本人と中国人の違い」について話していると二言目には「日本人は勤勉だ」「働き者だ」と言われたことを覚えています。今、中国人が使っている「过劳死(Guò láo sǐ、意味はそのまま「過労死」)」は、日本語から中国語に取り入れられた単語の一つです。


Already know you, that which you need.(何が必要かはすでに自分が分かっているはずじゃ



私が中国で会った若者たちもとにかくよく働く人たちで、会社勤めの人然り、自営業者しかり、休みなく働いていました。「なぜそんなに働くの?」と聞くと、独身男性の答えは決まっており、家と車を購入しておかないと結婚できない、ということ。既婚者に同じ質問をすると、子どもの教育のため、年老いた親を楽させるため、という答えが大部分でした。しかし、それを彼ら自身が本当に望んでいるのかというと、「没办法(Méi bànfǎ)」、つまり「みんな、そうしてるんだ。どうしようもない」という答えが多かった気がします。そして、それは今の日本でも同じなのかもしれません。「プレミアムフライデー良いね!でも、うちの会社では 15 時に退社なんてあり得ない」とか「とにかく月末までにこれを終わらせないと。だから無理、どうしようもない」という方が大半でしょう。



まずは時間の主導権を握ること


結局のところ、重要なのはプレミアムフライデーに同調できるかどうか、ということよりも金曜日にわずか数時間でも早目に退社して、家族や自分のために時間を使えないのはなぜか、ということです。それが金曜日午後 3 時であろうと、別の時間であろうと、仕事以外のことに数時間すら捻出できない生き方をあとで後悔しないのか、誰もが立ちどまって思いめぐらしてみるのは良いことかもしれません。


ホスピスで仕事をしていたある看護師は、患者が最後に後悔していることを聞き、記録したところ「他人の期待に合わせるのではなく、自分に正直に生きる勇気が欲しかった」という答えが一番多かったと言います。もちろん、自分に正直になるというのは会社の中で好き勝手な振舞いをする、ということではありません。良識を働かせながらも、自分の仕事量や時間をどうコントロールしていくか、ということです。会社勤めの方も、(私を含め)フリーランスの方も、今一度時間の価値を認識してみるのは決して無駄ではないはずです。

今回のプレミアムフライデーを良い機会として、一度考えてみませんか?




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著者プロフィール

YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、その後約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。現在はアフリカのガーナ在住、英語と地元の言語トゥイ語と日々格闘中。



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