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執筆者の写真SIJIHIVE Team

常にスイッチ ON の時代、今だからこそのデジタルデトックス


ガーナから 1 月末に帰国してから 3 か月が過ぎようとしています。もともと 4 月初めに戻ることにしていたため、当初は「ビザはちゃんと取れるのか?」「ガーナ行きのフライトは予定通り飛ぶのか?」というごく個人的な不安から始まり、今では「この世界はいったいどうなっていくのか?」という先が見通せない息苦しさを抱えながら、毎日スマホを握り締め、ニュースや友人からのメッセージをチェックする日々が続いてきました。そして、最近、ふと気付いたのは「スマホが近くにないとなんだかやたらとそわそわしてしまう」ということです。


脳内は常にビジー状態


思い出したのは「FOMO」というスラング。これは「Fear of Missing Out(何かを逃す不安)」という意味ですが、近年多くの人がスマホを手放せない理由として用いられる言葉です。つまり、自分が SNS をチェックしていない間に自分と繋がっている人たちが自分をのけ者にして、楽しいことをしているのではないか、という不安感にさいなまれてしまうのです。

私の場合は世界が刻一刻と動いているのに、それについていっていないと自分や家族の身にとんでもないことが降りかかるのではないかという漠然とした不安、そして外出できないために有り余る時間がスマホへと手を伸ばさせていたように思います。


いままでは数日遅れて知ったニュースでも「へー、知らなかった」と済ませることができたのが、今の情勢だとそれが許されないように感じていました。しかし、考えてみると、スマホで最新のニュースに触れて、その時点では多少の不安が解消されたとしても、数分後、数時間後にはまた情報が更新されます。そのたびに情報にキャッチアップするなんてことができるはずもありません。


脳を(良くも悪しくも)習慣化させるために、様々なサービス、コンテンツ、電子機器やアプリは私たちが「中毒になる」ように設計されていると言います。その根底にあるのが脳内の報酬系システムです。あることをして、脳が「嬉しい」「楽しい」「気持ち良い」という快感を覚えると、それがプログラム化され、行動のパターンになってしまうのです。

もちろん、スマホを使うことによって実際に不安がやわらげられ、気持ちが落ち着くことも事実なので、それを完全にやめる必要はないのですが、もし我慢できないのであれば、それは「デジタル中毒」の状態に陥っているということ。少しでも自分が当てはまると感じたら、早めに手を打つことにしましょう。そう、「デジタルデトックス」です。



意思よりも、環境を変えよ


「デジタルデトックス」というと、シリコンバレーなどで流行っている、郊外に出かけて山の中でスマホなどのデジタル機器から一切遮断されて数日間まとまった時間を過ごすことをイメージする方もおられるかもしれません。しかし、一般人にはそこまでの徹底したデジタルデトックスは現実的でないでしょう。


シアトルのアレン脳科学研究所所長であるクリストフ・コッホは「常時接続のネット中毒は精神のジャンクフード」だと言います。労働を終えたあとの一杯の生ビールはおいしいですが、常時飲み続ければアル中ですし、翻訳の仕事の合間にチョコレートを一つつまむとやる気が出ますが、常時食べ続ければ肥満になります。同じようにネットやデジタル機器の使用にもメリハリが必要ということです。


習慣を変えるのに、根性や意思の力は何の役にも立たないというのは様々な専門家が証明していることです。例えば、行動科学を専門にしている石川善樹氏は『仕事はうかつに始めるな』(プレジデント社)の中で「根性だけでは集中できない」、「ものごとに集中するためには、自分を律さなくてもいい環境をつくることが重要」だと述べています。


毎日 10 分でも「つながらない」ためのサンクチュアリ


自分の場合、寝る前にゴロゴロしながらスマホでニュースをチェックすることがなんとなく習慣になっていましたので、まずは寝室を「聖域」とし、そこにはスマホを持ち込まないようにしました。「スマホを我慢しなければ」という意思を介在させなくても良いようにしたわけです。実際、寝る前にスマホを見ると、その強い光が質の高い睡眠を阻害することはよく言われています。また、スマホを寝室に持ち込まないことによって、次の日、スマホでセットした目覚ましを止めるときに SNS やメールをチェックせずにそのままジョギングに出かけ、その時間までデジタルデトックスにあてることができます。さすがに走りながらメールチェックをしたり、SNS でメッセージを送ることも難しいので、自分の頭と身体というフィジカルなものに自然と思いが向きます。


コロナと人類の戦いはしばらく続きそうですが、感じるのは、わたしたちがこれまでと同じライフスタイルを求めながら、それを我慢しつづけることには限界があるというです。デジタルデトックスも、意思の力や自制心に頼って克服できるほど人間は強くありませんので、サナトリウムやキャンプ場にまで出かけないとしても、一日 10 分でも、デジタル機器を自然と遮断できる環境、仕組みづくりが必要なんだと思います。



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著者プロフィール

YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、その後約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。現在はアフリカのガーナ在住、英語と地元の言語トゥイ語と日々格闘中。



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