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ネット予約からお年玉まで…IT が変える春節の過ごし方

中国人にとって最も重要な祝日である春節がまもなくやってきます。今年の春節は 2 月 12 日ですが、中国にとってはコロナ禍の中で迎える 2 回目の春節です。


私は 2008 年から 2018 年にわたって中国で春節を過ごしましたが、たった 10 年の間でも春節の過ごし方は大きく様変わりしたように感じます。そして、春節のあり方を大きく変えた立役者は「IT」といっても過言ではないでしょう。今回はITが中国の春節をどのように変えてきたのかを取り上げます。



IT が変えた「春運」


「春運(Chūnyùn)」という言葉をご存じでしょうか?春節前後の中国国内の人の移動を指す言葉ですが、家族を故郷に残して上海や深センなど大都市に働きに出た人たちが一斉に帰省するため、その旅客数はとてつもない数になります。1995 年には約 10 億人でしたが、2017 年にはその 3 倍、約 30 億人にまで膨れ上がりました。


春運を代表する交通機関といえば、なんといっても中国全土に張り巡らされている鉄道です。日本での感覚からすると信じられないかもしれませんが、私が初めて中国で春節を迎えた 2008 年時点では、オンラインで切符を購入することはできず、乗車日の 5 日前に直接駅に出向いて窓口で長蛇の列に加わり、並ぶしかありませんでした。


1時間以上待ち続けてようやく窓口に辿り着けたと思ったら、「売り切れ!」の一言で追い返されたり、窓口の係員の言っていることが分からず匙を投げられ、「次!」の一言で諦めざるを得なくなったりと、切符購入には悔しい思い出がたくさんあります。

春節の時期には鉄道の輸送能力を越えた人々が乗車しようとするため、切符を購入することは困難を極めます。人々は長時間並んだ挙句、結局「立ち席」しか手に入れることができず、座席のない切符を握り締め、列車の連結部分や通路に簡易な折りたたみ椅子で故郷を目指したものでした。


しかし 2010 年から導入された切符購入サイト「中国鉄路客戸服務中心(中国鉄道乗客サービスセンター、通称 12306)」により、オンライン上で乗車日の 30 日前からチケットを購入できるようになりました。残数もチェックできますし、「支付宝(アリペイ)」や「微信支付(ウィ―チャットペイ)」などのオンライン決済方法を利用して支払えるようになり、切符の購入のために多くのエネルギーや時間をかける必要もなくなったのです。


また、スマホの利用とオンライン決済は鉄道切符以外にも広がり、「去哪儿(どこ行くの?)」というサイトで格安航空券を購入したり、帰省せずに国内外の観光地に旅行に出かける若者たちのためにホテル予約もできるようになったりと、一世代前の中国人は想像もしなかった春節へと変化してきました。



IT が変えた「紅包」


「紅包(Hóngbāo)」とは、赤い封筒にお金を入れて渡す、日本でいうお年玉やご祝儀のことです。春節の時にもこの紅包を盛んにやりとりするのが中国の習慣ですが、ITはこの伝統をも変え、2015 年頃からは遠く離れた場所にいてもオンライン上で渡すのが常識になっています。受け取った人はその額を現金化することもできますし、そのまま電子マネーとして利用することも可能です。


紅包のかたちを大きく変えたのはオンラインでのやり取りを可能にした、中国の巨大IT企業アリババグループ(「支付宝(アリペイ)」を運営)とテンセント(「微信支付(ウィ―チャットペイ)」を運営)です。


(「開」をタップすればお年玉を電子マネーでゲット!)


この決済方法を急速に拡大させたのが「紅包大戦」だと言われています。各社は、日本の紅白歌合戦に似た国民的番組、中国の「春晩(Chūnwǎn)」において、決まった時間にそれぞれのアプリを開き、「シェイク機能」を使ってスマホを振りまくれば金一封がゲットできるというイベントを開催したのです。「微信支付(ウィ―チャットペイ)」は 2015 年の春晩において約 80 億円もの企業からの協賛金を集め、お金をばらまいたそうです。この恩恵にあずかりたければ、アプリをダウンロードしなければならないというわけです。こうしたダイレクトで、スケールの大きなイベントをやれてしまうのも中国ならではという感じがします。


昨年は春運の旅客数は 10 億人に留まったそうですが、今年も新型コロナウイルスの影響でその数はさらに減ることが予想されています。ただ IT の利用が日本以上に進んでいる中国で人々はオンライン上で繋がり、伝統を維持しながらも、春節の新しい形を作り上げていくのではないかと思います。




参考サイト:


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI

2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。

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