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中国人は家族を褒めない?意外な事実を検証

更新日:4月14日



かつて中国語の初学者だった頃、中国語を少しかじって自己紹介や簡単な挨拶をしただけなのに、中国語の方に「中国語、とても上手ですね!」と褒められて有頂天になったことがありました。「中国語の発音って難しいはずなのに、もしかして才能あるかも…」と感じたものです。


ところが、後になって知ったのは中国語初学者の多くが同じ経験をしていたということです。つまり、中国の方は「褒め上手」なのです。


それに対して、日本人は「褒め下手」だと言われます。日本人があまり褒めないのは一世代前の話かと思っていましたが、企業や学校では今でも「褒め下手」の状態が続いているようです。みんな褒められることを欲しているのにも関わらず、です。


今回は「褒める」ことに対する日中の考え方の違いについて取り上げてみたいと思います。その先には記事のテーマにあるように「なぜ中国人が家族を褒めないのか」が見えてきます。


中国人が褒め上手な理由とは?


中国人がよく相手を褒める最大の理由は、以前の別の記事でも取り上げましたが、「面子(メンツ)」を重んじるからです。その中でも説明した通り、中国人にとって面子とは、日本人にとってのプライドのようなものではなく、その人の「価値そのもの」であり、面子を潰すことは相手の人格や存在を否定することにもつながります。そのため、コミュニケーションにおいては相手の面子を立てることが最も重視されます。その一つの手法が「褒める」ことなのです。


そう考えると、中国の方々が私たち外国人が話す中国語を褒めてくれる理由が分かります。「中国語を学ぶ」という行為そのものがすでに相手の面子を立てているため、発音がどれだけまずかろうが、文法がぐちゃぐちゃだろうが、相手も必ずこちらの面子を立ててくれるのです。


もちろん、これは私たち日本人に対してだけでなく、中国人同士にもいえます。相手が自分の面子を立ててくれようとしてしてくれたことに対して、お互い誉め言葉を惜しみません。例えば、家に招いて食事を準備してくれた相手に対して、お客側は家の内装や食事の味に賛辞を連発します。


日本人が褒め下手な理由とは?


では、日本人が学校や職場で「褒め下手」なのはなぜでしょうか?いろんな分析が考えられますが、企業内の人間関係について少し考えてみましょう。慶応義塾大学の小熊英二教授によると、企業内でお互いを褒めないのには「日本型雇用」に原因があるとのことです(「日本社会のしくみ  雇用・教育・福祉の歴史社会学」)。


今でこそ少しずつ変わり始めていますが、日本型雇用においては、社員は職種にアイデンティティを持っているわけでなく、所属企業にアイデンティティを持っています。新卒で一括採用され、その後はどの職種に就くかは分からないため、「ゼネラリスト型人材」を要請することに重きが置かれます。


このような環境の中では、従業員はその時々で自分の出来ないことを見つけて、努力し続けることが求められます。もし自分の得意なことだけを伸ばそうとすると、「わがまま」のように見られてしまうのです。結果的に「自分ができないところを教えてください」と上司に尋ねる人が評価され、褒めることはどんどん脇に押しやられていきます。


日本人が褒め下手な理由は他にも理由があります。それは、日本人の「ソト」と「ウチ」を二分する思考パターンです。日本人は血縁関係に結ばれた家族だけでなく、同じ企業に務める同僚も「ウチ」と考えます(「ウチの会社」など)。自分の側の人間である「ウチ」の妻や子どもを褒めることを美徳としない日本人は、「ウチ」の部下や同僚についても褒めない傾向が強いというわけです。


中国人が家族を褒めない理由とは?


さて、この「ウチ」と「ソト」を分ける思考パターンは、形こそ違えども中国文化にも存在します。ただ、中国人にとっての「ウチ」は主に血縁関係にある家族や親族に限られます。つまり、同じ企業に務めている従業員を「ウチ」と考えることはありません。


中国人がお互いに褒め合うのは面子を重んじるからだと述べましたが、それは主に「ソト」の人間との関係においてです。そのため、中国人が褒め上手だといっても自分にとって「ウチ」の存在である家族を褒めることはないのです。


中国の若者たちと話していると、その多くが親から褒められたことはほとんどない、といいます。親たちにとって子どもたちは面子を立てるべき対象にはないどころか、自分の面子を高めるために難関大学に合格したり、有名企業に就職したり、たくさんのお金を稼ぐことが期待されている存在です。


また、中国人が家族を褒めないのは面子以外にも理由があります。それは家族だけがお互いの悪いところを指摘できるからと考える傾向です。例えば、中国人と結婚した友人は、結婚するまで自分のことをよく褒めてくれていたのに、結婚すると全く褒められることがなくなって「へこんだ」と言っていました。でも、実は中国人なりの家族に対する愛情、思い入れの表れのようなのです。


ちなみに一般的に欧米諸国では、日本人や中国人が「ウチ」と考える家族に対しても誉め言葉を惜しみません。夫が妻を、親が子どもを日常的に褒めるコミュニケーションスタイルです。もちろん、企業内で同僚同士や、上司が部下を褒めることも日常茶飯事です。実際、英語では誉め言葉の語彙が豊富です。


このように見てくると、「褒めること」はそれぞれの文化と密接に結びついていることが分かります。中国では「ウチ」の範囲が家族に限られていますが、日本ではそれに加え、同じ企業で働いている従業員も含み、個人主義が基本の欧米文化圏では「ウチ」「ソト」と違いはありません。


褒め言葉は「ウチ」の人間には向けられないため、日本でも中国でも家族を褒めることは極端に少なくなります。日本の場合はそもそも褒めることが少ない文化ですが、中国の場合は「ソト」には誉め言葉を惜しまないため、家族を褒めないこととのギャップに戸惑ってしまうというわけです。


家族を褒めよう


どの文化圏にも一長一短がありますが、家族を褒めない文化は決して「褒められる」べきものではありません。世の中は「ジョブ型雇用」に移行しつつありますが、家庭内でなされているジョブにももっとフォーカスすべきです。


なんでもかんでも金銭的価値に換算する必要はありませんが、内閣府の経済社会総合研究所国民経済計算部の調査によると、女性の1年間の家事を貨幣で評価した場合の額は193万5,000円だったそうです。時給換算すると、1,470円、月給では16万1,250円とのこと。かなりの額ではありませんか?こうして見えないものを見るようにすれば、自然と感謝の心が湧いてきます。


日本人も中国人ももっと家族の働きに注目して、惜しみなく褒めることが大切なのは間違いありません。褒めるのが恥ずかしければせめて「谢谢」を増やしたいものです。


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。





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