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執筆者の写真SIJIHIVE Team

日本人の国際結婚、名字はどうなる?

更新日:2022年4月16日



「結婚と家族をめぐる基礎データ」(2021年11月2日、内閣府男女共同参画局)によると、国際結婚、つまり夫婦の一方が日本国籍でない婚姻の件数及び全婚姻件数に占める構成割合は2006年の4.5万件(6.1%)をピークに減少し、2020年は1.5万件(2.9%)でした。


この背景には日本人の婚姻件数そのものが減っていることがあります。2006年の婚姻件数は約73万件でしたが、2020年は約53万件にまで減少しました。それでも日本国内100組のカップルのうち、約3組は国際結婚の夫婦という計算になります。


特に翻訳・通訳業界では業界柄、国際結婚の方が多く、カタカナの名字をお持ちの方もたくさんいらっしゃいます。国際結婚ならではの喜びもあれば、当事者でないと分からない大変さもあるかと思います。


今回は苦労なさる点の1つと思われる、日本人と外国籍の方が国際結婚したときの名字の扱いとオプションについてご紹介します。


国際結婚は夫婦別姓が原則


近年、日本人同士の選択的夫婦別姓の法制化に関する議論が続いていますが、国際結婚では夫婦別姓が原則です。なぜなら、結婚後同じ姓を名乗ることで同じ戸籍に入りますが、外国籍の方には(帰化しない限り)戸籍が作成されないからです。


豆知識:日本人以外の人には戸籍がない、というのは意外に普段意識しないポイントです。たとえば夫が外国籍で妻、子どもが日本人の場合、その所帯の戸籍は妻(筆頭者)と子の2つのみになります。


今のところ、日本人同士では夫婦別姓にするためには事実婚しか方法がありません。そのため、夫婦別姓の国際結婚のカップルは公的な書類を提出する際などに不便なようで、法的な夫婦であることを証明するためにその度に住民票などの書類が必要になるとのこと。また、もっと厄介なのは子供の姓が親のどちらかの姓と異なるため、学校の面接などで理由を尋ねられたりと、なにかと大変なこともあるそうです。



日本人配偶者が名前を変える場合は3つ


では、夫婦別姓ではなく日本人が外国籍配偶者の姓に変更し、夫婦同姓にするためのオプションをみてみましょう。そのためには後述するように、別途「氏の変更届」が必要です。


話を分かりやすくするために外国籍配偶者をジェームズ・ポール・マッカートニー、日本人配偶者を山田花子さんとします。


この場合、山田花子さんが取りうるオプションは以下の3つです。


1. 姓を変更


姓を変更する場合、山田花子さんは「マッカートニー花子」さんになります。一番シンプルなパターンですね。


2. 姓と名を変更


次に、姓と名を変更する場合は、姓は「マッカートニー」、名が「山田花子」になり、「マッカートニー山田花子」になります。こうすることで旧姓「山田」を残すことができますが、いままで姓名だった「山田花子」が結婚後は名前になるというのはなんだか不思議な感じがします。


3. 姓を合体


そして、最後に姓を合体させる場合ですが、姓の順番は自由に決めることができます。つまり「マッカートニー山田花子」でも「山田マッカートニー花子」でもよいのです。

ちなみに「McCartney花子」はNGです。というのも、外国の姓を使用する場合、カタカナのみの表記になるからです。


そうなると、「韓国人や中国人の場合など漢字を使用している場合はどうなるのだろう?」という疑問が湧いてきます。この場合は、もしその漢字が「王」や「李」など、日本文字とみなされている場合は使用できるようです。


さらに、外国の名前にはジェームズ・ポール・マッカートニーのようにミドルネームが含まれていることがあります。ミドルネームも姓に含めることは可能です。その場合、結婚後の姓は「ポールマッカートニー」か「マッカートニーポール」になり、山田花子さんは「ポールマッカートニー花子」か「マッカートニーポール花子」になります。だんだん頭が混乱してきましたね…



手続きもややこしい…


前述したように、国際結婚は夫婦別姓が原則であるため、同姓を名乗るためには婚姻届けとは別の手続きが必要です。それが戸籍法107条2項が定める「氏の変更届」です。上に挙げたオプションのうち、もっともシンプルなケース、つまり山田花子さんが「マッカートニー花子」になる場合は、婚姻届けと同時に役所に備え付けの「氏の変更届」を済ませれば足ります。ただし、この手続きは婚姻から6ヶ月以内に行う必要があります。


ややこしいのは、「姓と名を変更」もしくは「姓を合体させる」場合です。この場合、名前の中に2つの姓が入り込むことになります。これは「複合姓(ダブルネーム)」と呼ばれ、名乗るためには家庭裁判所の許可が必要です。届出ではなく「許可」ですから場合によっては却下される場合もあるようです。例えば、ミドルネームを含めて姓を「ポールマッカートニー」とし、名前をもとの自分の姓名「山田花子」にして「ポールマッカートニー山田花子」に変更するケースなどは却下される可能性が高いようです。


二人は納得するとしても夫婦が子供を授かった場合、子供もその姓をそのまま引き継ぐことになるため、あまりにも長すぎる姓は却下されるのかもしれません。(確かに「ポールマッカートニー一郎」では子供も何かと不便を強いられるでしょうね…)


パスポートはどうする??


日本では夫婦別姓を選択した場合に何かと厄介なことが多いようですが、その1つが海外渡航でしょう。パスポートも当然夫婦で別々の姓ですが、これでは夫婦同姓しか法的に認められていない日本では、家族関係にあることを証明することが難しくなります。そこで日本人側は外国籍配偶者の姓を併記することになります。


日本のパスポートには「別名併記」という制度があります (画像は外務省の説明ページより)

外務省によると、「我が国又は外国の政府機関又は地方公共団体が発行した書類等により戸籍に記載されている氏名以外の呼称が社会生活上通用しているものであることが確認され、かつ、申請者の渡航の便宜のため特に必要であると認める場合」には当該呼称をパスポートに併記できるとのことです。


豆知識:どのような時に別名を使うの?

たとえば、日本では別姓だが海外では夫や妻の姓で仕事をしていたり、ハネムーンなど夫婦や家族でホテルの特別サービスを利用したりする場合(施設によっては夫婦であることの証明が必要)などが考えられます。


ただ、この別名はパスポートのICチップに含まれていません。また、「MRZ」と呼ばれるパスポート顔写真下部に印字されている文字列データにも含まれておらず、外務省は航空券やビザを取得する際に別名を含めた名前を用いないようにと注意喚起しています。しかし、厄介なことに航空会社によっては別名を含めた名前で予約するようにアナウンスしているところもあり、事前の確認が必須です。これも日本人同士のカップルにはない悩みですね。




夫婦同姓ゆえの大変さ?


法務省も認めている通り、夫婦同氏姓を採用しているのは日本以外にはないようです。日本は婚姻後は夫婦同姓しか選択できないため、夫婦別姓だとどうしても「法的に家族関係にない」と推定されてしまいます。結婚後の居住地や、お子さんの通学などを考えてよく検討して決めるのが良いでしょう。


選択的夫婦別姓に関してはさまざまな議論があるため、ここでは深入りしませんが、国際結婚のカップルが経験している大変さは日本独特の法制度ゆえともいえるかもしれません。


※今回の記事は外国籍の方との結婚で、お子さんが日本国籍取得するカップルを前提にして書かせていただきました。ご了承いただけますと幸いです。


参考サイト:


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著者プロフィール


YOSHINARI KAWAI


2008 年に中国に渡る。四川省成都にて中国語を学び、約 10 年に渡り、湖南省、江蘇省でディープな中国文化に触れる。その後、アフリカのガーナに1年半滞在し、英語と地元の言語トゥイ語をマスターすべく奮闘。コロナ禍で帰国を余儀なくされ、現在は福岡県在住。



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